ベートーヴェン 交響曲第5番 運命
ベートーヴェンの作品中でも形式美・構成力において非常に高い評価を得ており、ベートーヴェンの創作活動の頂点のひとつと考えられています。
ベートーヴェンの交響曲の中でも最も緻密に設計された作品であり、その主題展開の技法や「暗から明へ」というドラマティックな楽曲構成は後世の作曲家に模範とされました。
本交響曲は、日本では『運命』または『運命交響曲』という名称で知られていますが、これは通称であってベートーヴェン自身による正式な命名ではありません。
この通称は、ベートーヴェンの弟子アントン・シンドラーの「冒頭の4つの音は何を示すのか」という質問に対し「このように運命は扉をたたく」とベートーヴェンが答えたことに由来するとされています。しかし、シンドラーはベートーヴェンの「会話帳」の内容を改竄していたことが明らかになっており、信憑性に問題があります。
学術的な妥当性は欠くものの、日本では現在でも『運命』と呼ばれることが多い。海外においても同様の通称が用いられることがあります。
交響曲第3番『英雄』完成直後の1804年頃にスケッチが開始されましたが、まず先に交響曲第4番の完成が優先され、第5番はより念入りにあたためられることになりました。そのほか、オペラ『フィデリオ』、ピアノソナタ第23番『熱情』、ラズモフスキー弦楽四重奏曲、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第4番などを作曲した後、1807年から1808年にかけて、交響曲第6番『田園』と並行して作曲されたそうです。
楽譜の初版は1809年4月に出版されました。同年中の増刷においても若干の修正が加えられたようです。
初演は1808年12月22日、オーストリア・ウィーンのアン・デア・ウィーン劇場で「交響曲第6番」として初演。現在の第6番『田園』は、同じ演奏会では第5番として初演されたそうです。
第1楽章 Allegro con brio
「ジャジャジャジャーン」、もしくは「ダダダダーン」という有名な動機に始まります。これは全曲を通して用いられるきわめて重要な動機になります。特に第1楽章は楽章全体がこの「ジャジャジャジャーン」という動機に支配されており、ティンパニーも終始この動機を打ちます。
案外、忘れられがちなのは『運命』は、ベートーヴェンが書いた初めての短調の交響曲だということです。百曲を越えるハイドンの交響曲中、短調の交響曲は 10%程度に過ぎないし、モーツァルトの41曲中、短調の曲は、いずれもト短調の〈25番〉と〈40番〉の2曲だけです。
第2楽章 Andante con moto
「歩くような速さで、動きを付けて」という意味になります。
この楽章で注目すべきはトランペットが先導する副主題です。それは変イ長調の主題がひとしきり奏でられた後、ppからffの不意打ち的なデュナミークの跳躍に続くC音(ド)のユニゾンを経て、ファンファーレ風に奏される。この革命歌的なフレーズは、勝利の到達点としてのハ長調を、山登りでいうなら尾根歩きの途中で、突然、雲が晴れて山頂が見えたみたいに示す効果があります。
チェロの低音から始まり、徐々に盛り上がるのが第2楽章です。
2つの主題が現れ交互に変奏(主題をさまざまに変化させること)されますが、落ち着いた雰囲気を持った楽章です。
第3楽章 Allegro. atacca
ここででてくる"atacca"は音楽用語で続けるという意味があります。そう第3楽章から切れ間なく第4楽章が演奏されるのです。それまでは「ドドドドン、ドドドドン」のリズムに合わせ陰鬱な演奏で迫っていきます。
複合三部形式は3つの部分で構成されていて、その中でもいくつかの部分に分かれている形式です。
冒頭はコントラバスの低音からはじまり、続いて力強いホルンの音が「ン(休符)ジャジャジャジャーン」(主題)を響かせます。
主題が少しずつ高い音の弦楽器により演奏されていき、そして静かになっていきます。
この様子が緊張感を作り出し、第4楽章へと移っていきます。
第4楽章 Allegro - Presto
トロンボーンとコントラファゴットが低音域に、ピッコロが高音域に加わり、フォルテッシモ(とても強く)で演奏が始まります。明るい未来を暗示するがごとく。この展開、大好きなんですよね。毎回ゾクゾクしてしまいます。
明るいイメージの楽章で、第1楽章の雰囲気はなくなります。
ザ・歓喜の歌!
さて、ベートーヴェンの第5番を「かずメーター」で評価しました。
第一楽章 92点
第二楽章 90点
第三楽章 91点
第四楽章 97点
ベートーヴェンの交響曲中では最も有名な曲ですが、ちょっと聞き飽きた感が自分にはあるので少々辛い数字になってしまったのかなぁと反省しきりです。いずれの楽章も皆さんに推薦できる構成となっております。
お勧めのCDです。