交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ベートーヴェン 交響曲第6番 田園

今回はベートーヴェン交響曲第6番『田園』についてお話します。

 

交響曲第6番は1808年に完成させた6番目の交響曲です。『田園』って標題はベートーヴェン本人がつけたようです。

古典派交響曲としては異例の5楽章で構成されていて、第3楽章から第5楽章は連続して演奏され、全曲及び各楽章に描写的な標題が付けられるなど、ベートーヴェンが完成させた9つの交響曲の中では合唱を導入した交響曲第9番と並んで独特な特徴を有します。また、徹底した動機展開(同じフレーズが繰り返される)による統一的な楽曲構成法という点で、前作交響曲第5番とともにベートーヴェン作品のひとつの究極をなすといわれています。

 

前述のとおり、第6交響曲は、ベートーヴェン交響曲の中で標題が記された唯一の作品です。ベートーヴェンが自作に標題を付した例は、他に「告別」ピアノソナタ(作品81a)などがありますが、きわめて珍しいです。とくにこの第6交響曲は、ベルリオーズやリストの標題音楽の先駆をなすものと見られています

標題は、初演時に使用されたヴァイオリンのパート譜ベートーヴェン自身の手によって「シンフォニア・パストレッラ、あるいは田舎での生活の思い出。絵画描写というよりも感情の表出」と記されている

また、各楽章についても次のような標題が付されています

  1. 「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」
  2. 「小川のほとりの情景」
  3. 「田舎の人々の楽しい集い」
  4. 「雷雨、嵐」
  5. 「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」

これらの標題は楽譜以外にも認められ、1808年12月17日付『ウィーン新聞』に掲載された初演演奏会の予告には「田舎の生活の思い出」という副題が見られます。

 

1807年暮れからスケッチが開始され、ほぼ完成した後の1808年初春から1808年初秋にかけてと考えられています。第5番と第6番は番号が反対で初演されたぐらいなのでほぼ同時期に作曲されたのでしょう。

 

第1楽章 「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」。アレグロ・マ・ノン・トロッポ

ソナタ形式。弦のほかは木管とホルンのみが使用されます。とてもチェロとヴィオラ、第1ヴァイオリンの掛け合いの第1主題が印象的です。

展開部では徹底的に第1主題を演奏しまくります。なんと主題の動機は計36回も繰り返えされるんです。

再現部では第2ヴァイオリンとヴィオラによって第1主題が示されます。4小節目の半終止の代わりに第5小節から第1ヴァイオリンの軽快な句が現れますが、これは第5番の第1楽章再現部でのオーボエの叙唱句と同様の手法です。

第2主題では型どおりにヘ長調で演奏され、コーダ(終結部分)では展開部と同じように始まりますが、すぐに転調して木管と弦のかけあいから弦のみとなり、クラリネットファゴットの重奏、ヴァイオリン、フルートと続いて全合奏で終わります。

 

第2楽章 「小川のほとりの情景」。アンダンテ・モルト・モッソ

ソナタ形式。チェロとコントラバスのピチカートに、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、独奏チェロ(2人が弱音器を付けて弾く)が小川のせせらぎのような音型を加え、その上に、第1ヴァイオリンが静かな第1主題を示します、いい雰囲気の展開です。第2主題は、第1ヴァイオリンが高音域から分散下行、分散上昇し、さらにファゴットが歌う主題に他の楽器が集まって発展します。その後、第1主題による短いコデッタ(コーダは楽章の終結、コデッタは主題の終結です)を経て展開部に入ります。

展開部では主として第1主題を扱いながら転調していきます。ここでは木管楽器の充実した書法が特徴的であり、木管のフレーズは再現部でも装飾的用法として現れます

やがてフルートが第1主題を示して再現部となります。再現部の第1主題部は短縮されていますが、第2主題以降は概ね型通りで演奏されます。ヴァイオリンにしばしば現れるトリルという奏法は、小鳥のさえずりを象徴化したもので、この小鳥の描写はコーダに入ると明確に示されることとなり、フルートがサヨナキドリ(ナイチンゲール)、オーボエがウズラ、クラリネットカッコウをそれぞれ模倣して鳴き交わす結びとなります

 

第3楽章 「田舎の人々の楽しい集い」。アレグロ

複合三部形式をとり、事実上のスケルツォ楽章になります。主部は弦のスタッカート主題(ヘ長調)に木管の旋律がニ長調で応答する。これが繰り返されると今度は弦がニ長調のまま主題を出し、木管ハ長調となります。ハ長調は主調であるヘ長調の属和音(ドミナント)調であり、総奏へと昂揚してヘ長調に戻ります。細かいことは別として弦と木管が絡みながら見事なハーモニーを奏でていきます。ベートーヴェンが自然な音楽の流れの中できわめて見事な調的コントラストを見せる部分です

主部の後半では、オーボエの軽やかな主題がクラリネットからホルンへと受け継がれて、この作品の大きな特徴である管楽器の効果的な活用が強調されます。また、オーボエの旋律にファゴットが単純な音型で合いの手を入れるのは、オーストリアの田舎の楽隊が、演奏中に居眠りしながらふと目を覚まして楽器を持ち直したりする様子をユーモラスに描いたものと解釈されています

中間部では4分の2拍子となり、ここからトランペットも加わって盛り上がります。

以上が繰り返され、テンポ・プリモ(1小節の最初と同じ速さに戻す)から主部がやや変化した形で戻ります。プレスト(急速に)に速度を上げてクライマックスを築くと、アタッカ(切れ目なく)で第4楽章へとつづきます。

 

第4楽章 「雷雨、嵐」

前楽章からティンパニトロンボーン(2本)、ピッコロが加わります。全曲でもっとも描写的な部分となります。

楽進行がリアルタイムを表現しており、時々刻々と変化する自然の様相が決して時間的に復帰することがないように、音楽形式の一般的構造である開始主部とその再現的な反復という枠組み構造に従ってはいません。まず、低弦が遠雷のようなトレモロを示し、第2ヴァイオリンの慌ただしい走句を経てやがて全合奏の嵐となります。ティンパニの連打、管楽器の咆哮、ヴァイオリンの走句が激しい風雨や稲妻の閃光を暗示します。

この楽章に用いられているもうひとつの注目すべき語法は、強弱の急転換によるコントラストです。嵐は一時落ち着くかに見えるが、遠くの雷鳴に突然の稲光のようなピアニッシモと強打が交互に現れる発展の中で再び激しくなっていく様子が示されます。嵐の猛威は、ピッコロの燦めき、減七和音を伴った半音階句の上下行によって表出されます。ようやく嵐が凪ぐと、オーボエによるハ長調のうららかな旋律が聞かれます。ここでは、楽章冒頭の変ニ長調の8分音符の音型が4倍に拡大され、2分音符の動きとなって優しく歌われ、雲がとぎれて日の光が差し始める兆しがうかがえます。そして、フルートの愛らしい上昇音型(第7小節ですでに示されていた音型)となり、アタッカで第5楽章につづきます。

 

第5楽章 「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち」

ロンド形式ソナタ形式の混成によるロンドソナタ形式です。冒頭、クラリネットの素朴な音型にホルンが音程を拡大して応えるが、「ホルン5度」による純粋かつ自然な響きが浄化された感じを高めます。加えて、ヴィオラとチェロによる第1楽章同様の空白5度の保持音を伴っており、牧歌風が強調されます

チェロのピチカートの上に第1ヴァイオリンが前奏に出た音型の転回形に基づく主要主題(第1主題)を示し、第2ヴァイオリン、さらに低弦とホルン、木管へと移っていく。副主題(第2主題)はハ長調で第1ヴァイオリンに示され、第1楽章の第1主題との関連がある。この終止とともに冒頭主題が回帰してきます

新しい中間主題はクラリネットファゴットオクターヴで現れ、これに第1主題に基づく展開風な経過句がつづきます

やがて第1主題の前奏がフルートに帰ってきて、クラリネットがこれに応えると、再現部となる。第1主題は第2ヴァイオリンに出るが、同時に主要主題に基づく変奏が第1ヴァイオリンから第2ヴァイオリン、ヴィオラとチェロへと受け継がれて高揚していきます。 第2主題はヘ長調で戻ってきます。

提示部と同様に再現部が終わると、ここから長大なコーダに入り、第1主題による変奏的展開となり、大きな高揚を示す。その過程では、クラリネットファゴットの短いリズム音型に第2楽章の小鳥のさえずりを思い起こさせる音色や響きも出てきます。チェロとファゴットに16分音符のオブリガート対旋律が再び出ると、ここから無窮動風な律動が大きなうねりとなって最後のクライマックスを呼び起こす。頂点から急速に音量を落としてピアニッシモで弦楽が主要動機を示し、最後は弱音器を付けたホルンが楽章冒頭のクラリネットの原主題を回想し、各弦楽が弧を描くようなオブリガート音型を受け渡しながら下行し、全曲を閉じます。

 

さて、ベートーヴェンの第6番を「かずメーター」で評価しました。

第一楽章 92点

第二楽章 91点

第三楽章 92点

第四楽章 90点

第五楽章 93点

 

第5楽章を聞き終わると、「なんて幸せなんだ!」って気分にさせてくれる曲です。個人的にはベートーヴェン交響曲の中で自分は6番が一番大好きなんです。

(かずメーターは別ですが)

 

 

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お勧めのCDです。