ベートーヴェン 交響曲第8番
いろいろ発展してきたベートーヴェンの交響曲の流れで以前の優雅な曲調に戻ったのがこの第8番ですね。第1楽章なんかはよくTV番組でも使われますし、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
1814年2月27日、交響曲第7番などとともに初演されました。公演では7番のほうに人気が集中したそうです。そのことに対しベートーヴェンは「聴衆がこの曲(8番)を理解できないのはこの曲があまりに優れているからだ」と語ったそうです。ベートーヴェンの交響曲の中では比較的小規模で、従来の古典的な形式に則っていますが、独創的な工夫と表現にあふれています。
なお、ベートーヴェンの9曲の交響曲のうち、この曲のみ誰にも献呈されなかったそうです。
第1楽章 Allegro vivace e con brio
序奏がなく、いきなり華やかなトゥッティ(合奏)で始められます。古典的な印象を受けるが、第2主題が6度の平行長調であるニ長調を通り、かつワルツ調に提示されるなど、工夫が見られます。スフォルツァンド(ある音符または和音に強いアクセントを与えること)を多用し、 ヘミオラ(3拍子の曲で、2小節をまとめてそれを3つの拍に分け、大きな3拍子のようにすること)でリズムを刻む展開部はベートーヴェンには珍しく手短にまとまっていますが、その分非常に密度が濃くなっています。有名な第5交響曲の第1楽章第1主題と同じ「タタタタッ」の形をオクターブに跳躍させてリズムをとっているのが特徴的です。再現部では、トゥッティ(合奏)がfffで鳴り響く中で低弦が第1主題を再現しますが、音のバランスをとるのが難しく、指揮者の腕の見せ所となっています。第1主題の動機で曲を締めくくるのは第9交響曲の第1楽章とおなじです。第5交響曲の第1楽章同様ほとんどの演奏例で提示部が反復されています。
第2楽章 Allegretto scherzando
(やや早くたわむれるように)
ハイドンの『時計』交響曲の第2楽章と同様に、木管がリズムを刻む中、弦により歌唱的な主題が歌われます。愛らしい楽章です。この交響曲は同時初演となった第7交響曲同様、緩徐楽章を欠いており、第2楽章を実質的なスケルツォとする解釈もあります。
第3楽章 Tempo di Menuetto
(メヌエットの速さで)
ベートーヴェンが交響曲の楽章として用いた唯一のメヌエット(ヨーロッパの舞曲のひとつ。4分の3拍子で、2小節が1つの単位となってフレーズが構成されている)。ただし導入部にアクセントが付けられていたり、宮廷舞曲というよりもレントラー(3/4拍子の南ドイツの民族舞踊)風であったりするなど、ベートーヴェンの独創性も十分です。トリオにおけるチェロパートの伴奏は3連符だけでまとまっておりスケルツォ的です。トリオのホルンとクラリネットの牧歌風の旋律は、作曲当時ベートーヴェンが滞在していたカルルスバートの郵便馬車の信号をもとにしたと言われています。
第4楽章 Allegro vivace
自由なロンド形式(A-B-A'-A-B-A"-C-A-B-Coda)。ソナタ形式と見ることもでき、実際そのように解説されている場合もあります。その場合、曲のほぼ半分に相当する前半部は完全にソナタ形式であるので(上記A'が展開部)、後半の半分すべてがコーダ(上記A"[4]以降)となりますが、ベートーヴェンの交響曲における最終楽章のコーダは執拗で長大化する傾向があるので、コーダに第2の再現部が入っているという入れ子構造、あるいは提示部(上記A-B)が二度違う形で再現されるという(1回目の再現部はほぼ提示部の繰りかえし。2回目の再現部は他のベートーヴェンの再現部のように大幅に変奏されている)ロンド形式とソナタ形式の複合形式という見方もできます。6連符によるタタタタタタのリズムを特徴とし、強弱が激しく入れ替わります。終始6連符のリズムが保たれたままに展開されます。楽器の演奏法ではティンパニとファゴットの1オクターブの跳躍が特徴的です。コーダは意表をつく転調によるパッセージが盛り込まれています。同じ和音を保持したまま楽器を次々に移り変わらせていく手法が使われています。
さて、ベートーヴェンの第8番を「かずメーター」で評価しました。
第一楽章 91点
第二楽章 89点
第三楽章 90点
第四楽章 92点
第4楽章いいですね。じっくり味わってもらいたい曲です。
お勧めのCDです。