交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ラフマニノフ 交響曲第2番

今回はラフマニノフ交響曲第2番についてお話します。

先に書いてしまいます。この曲、すっごくいい曲です!特に第三楽章。なんか聞いた曲だなぁと思っていたら、1976年にヒットしたアメリカの歌手エリック・カルメンの「恋にノータッチ」(Never Gonna Fall In Love Again)じゃんって思いググってみたら正解。全体的に耳当たりの良いとてもいい旋律です。

 

1900年から翌年にかけて作曲された《ピアノ協奏曲第2番》は大きな成功を収め、ラフマニノフは《交響曲第1番》の初演の失敗による精神的な痛手から立ち直り、作曲家としての自信を回復することができました。1904年にはこの作品によりグリンカ賞と賞金1000ルーブルを授与されました。私生活の上でも1902年にナターリヤと結婚、翌年には長女を、1907年には次女を授かりました。《交響曲第2番》はこのようにラフマニノフが公私ともに充実した日々を過ごしていた時期の作品です。

1904年から翌年にかけて、ラフマニノフボリショイ劇場における帝国歌劇場の指揮者として2期にわたる成功を収めていました。しかし彼は自分は第一に作曲家であるとの自覚から、演奏会のスケジュールに作曲の時間が奪われていると実感していました。そこでより作曲に専念できるように、またロシア国内の(後にロシア革命を招くこととなる)不穏な政治情勢に煩わされることのないように、1906年に妻と幼い娘を連れてドレスデンに移り、3年間この地に滞在しました。

交響曲第2番》は1906年10月から1907年4月にかけて、ドレスデンと夏の間だけ帰国して過ごした妻の実家の別荘地、イワノフカで作曲されました。初稿にはひどく不満足であったものの、数ヶ月の改作を経てこの作品を仕上げると1908年1月26日にサンクトペテルブルクにて自身の指揮で初演を行いました。演奏は大成功を収め、初演から10ヵ月後に二度目のグリンカ賞を授けられました。

320ページにのぼる自筆譜は永く紛失していましたが2004年になって発見され、テイバー財団(the Tabor Foundation)によって所有されていましたが、大英図書館に永久貸与となりました。その後、2014年5月20日にロンドンでサザビーズにより競売に掛けられ、120万ポンドで落札されました。

 

曲はロシアの交響曲の伝統に従って、ドラマティックな連続体として構成されています。

動機や「旋律の絶えざる美しい流れ」の強調といったこの曲の特色は、チャイコフスキーの《交響曲第5番》やバラキレフの《交響曲第2番》といった前例に倣うものであり、ゆくゆくはプロコフィエフの《交響曲第5番》やショスタコーヴィチの《交響曲第5番》にも受け継がれるものでした。ただしラフマニノフは、この曲において主要なモチーフをチャイコフスキーのように標題的な「固定観念」としては利用しておらず、より純音楽的な循環主題として処理しています。

ちなみに、ホ短調の有名な交響曲という例はこの曲のほかに、ハイドンの《第44番『哀悼』》やブラームスの《第4番》のほか、チャイコフスキーの《第5番》、ドヴォルザークの《第9番『新世界より』》、マーラーの《第7番》、シベリウスの《第1番》、ショスタコーヴィチの《第10番》といった例がありますが、これらの多くはブラームスの第4番以降、19世紀終盤から20世紀に用いられるようになったもので、それ以前はハ短調ニ短調に比較して交響曲で使われることの少ない調でした(ホ短調自体はバロック時代やハイドンの古典派時代にはしばしば用いられていた調性である。)。

 

第1楽章 Largo - Allegro moderato

序奏つきのソナタ形式(提示部反復指定あり)

この楽章は陰鬱な序奏から始まりますが、この序奏には全曲を通じて重要な役割を果たす動機がいくつか盛り込まれています。たとえば、チェロとコントラバスが奏でるモットー動機、それに続く木管とホルンによる大らかな動機と、ヴァイオリンとヴィオラによる小刻みな動きなど。これらの動機が繰り返され、弦のピツィカートなども伴って高潮していきます。高潮の過程で拍子は4/4と2/4が目まぐるしく入替り、6/4拍子のところで頂点を迎えます。一旦引いたところでイングリッシュホルンが冒頭の動機に基づく音型で主部への橋渡し役を務めます。これに呼応するかようにヴァイオリンとヴィオラによるトレモロがあって主部に入ります。ヴィオラトレモロは主部の第1主題部でも継続され、クラリネットともどもリズムを刻んでいくことになります。この序奏は第1主題に比して異例の長さです。

アレグロモデラートの主部では、まずヴァイオリンによって緊張した第1主題が提示され、それが様々な楽器によって拡大されていきます。可変拍子的な感覚が特に主部以降のこの楽章で目立っており、特長ともなっています。幾分テンポを速め、3連符のリズムも加わって更に発展していきます。一旦、静まると続いて、木管と弦がト長調の抒情的な第2主題を柔らかく歌います。続いて序奏でのヴァイオリンの動機を基に展開的に扱われ、美しく歌われて盛上ります。曲は静まり木管の導入が吹き始めると展開部へ入ります。

展開部ではモットー動機が変形され、気まぐれに介入してきます。この変形された動機はヴァイオリン・ソロでまず扱われ、次いでクラリネットへと移り繰返されます。金管が、序奏で木管とホルンが演奏した動機に基づいて、ファンファーレ風にそれを響かせます。テンポを落とし、モットー動機を用いて劇的なクライマックスを築きます。テンポが元に戻ると再現部へと突入します。

ここでは2つの主題が再現されますが、第1主題部は展開部の続きのような扱いとなります。第2主題は型通りに再現されますが、提示部と異なりクライマックスを築きまく。さらには序奏でのヴァイオリンの動機を基に曲が進められていきます。そしてコーダは、まず第1主題の断片を扱います。序奏での木管とホルンによる動機が変形されて演奏されますが、暗い雰囲気を持ったまま、曲はホ短調で決然と閉じられます。

 

第2楽章 Allegro molto

複合三部形式スケルツォ

ロシア5人組」(とりわけボロディンバラキレフ)による交響曲の構成の前例に従って、スケルツォ楽章が緩徐楽章に先立っています。A-B(Moderato)-A-C(中間部、Molto allegro)-A-B-A-Coda(怒りの日)の構成で、《怒りの日》が楽想のベースとなっています。

冒頭の画然としたリズムに乗って、その上にグレゴリオ聖歌の《怒りの日》に由来する主要主題がホルンによって示されます。この主題を中心に曲は盛り上がりをみせ、リズムを強調する金管群の絶叫にまで高まりますが、やがてクラリネットのソロをきっかけにモデラートへとテンポが落ちます。モデラート部(Bの部分)ではヴァイオリンを中心に民謡風の柔和なメロディーを歌いますが、それはすぐにスケルツォのリズムにかき消されてしまいます。木管の短い導入を経てA部分の再現部分に戻ります。この再現部分はスケルツォの提示部分と比べると変形され、短くなっています。弦のピッツィカートで主要主題が静かに演奏されるとスケルツォ主部が閉じられます。

突然シンバルを含めた強烈な1打で中間部が始まります。中間部(Cの部分)では曲想が大きく変わり、スケルツォ主題の要素を対位法的に処理した落ち着かない音楽となります。中間部の後半は「Meno mosso」となり、ホルンのファンファーレに乗った軽快な行進曲風の音楽となります。この部分が終わるとスケルツォ主部へ戻る為の推移句となり、その頂点に達するとスケルツォ主部へ戻ります。

スケルツォ主題へと戻って、曲は再び盛り上がりをみせます。ここではスケルツォ主部が幾分変形されています。モデラート部は、ほぼそっくり再現されます。コーダ前のAの部分も変形され再現されます。コーダではスピードを落とし、冒頭のリズムと金管のコラールによる《怒りの日》から派生した旋律が交錯し、弱々しく楽章を閉じます(ラフマニノフは《怒りの日》のモチーフがお気に入りだったため、他にも《交響曲第3番》、《パガニーニの主題による狂詩曲》など多くの作品に共通して見出すことが出来ます)。

 

第3楽章 Adagio

三部形式

全4楽章の中で最も広く知られる、ラフマニノフならではの美しい緩徐楽章です。まずヴィオラによるスラヴ風の流れるような旋律が、儚い憧れを込めるかのように歌われます。続いてクラリネットのソロによるノクターン風の長閑な旋律がこれに代わります。中間部では第1楽章冒頭の序奏に出たヴァイオリンの動機が変形され、イングリッシュホルンオーボエのソロがさらにそれを変容させます。その後、オーケストラ全体によってこの曲の情緒面での頂点が形成され、全休止ののち、最初のテンポへと戻ります。

その後は、これまでに出た3つの素材が様々な楽器のソロによって出され、次第に組み合わさりながら曲は延々と流れます。そして楽章の結末では、統一動機が原形のまま(但しこの楽章の主調で)現れて第1楽章との結びつきを再び強め、静かに閉じます。

 

第4楽章 Allegro vivace

ソナタ形式

ロシアの交響曲の伝統により、先行楽章の動機や主題が集約的に総括される終楽章となっています。低音楽器による短い前奏のリズムに導かれ、エネルギッシュな第1主題が提示されます。管楽器による行進曲風のエピソードを挟んでこの主題が繰り返されたのち、ニ長調に転調し、力強くも甘美な第2主題が姿を現します。途中アダージョにテンポが落ちて、第1楽章冒頭の動機や、第3楽章のロマンティックな旋律がふと浮かびあがって回想されますが、すぐに元のテンポに戻ります。

展開部はまず第1主題を扱いますが、主題はかなり変形されています。ファゴットソロの旋律のところからは行進曲風のエピソードの主題を扱います。ティンパニーを除く打楽器群が鳴り響き、テンポが元に戻ると再現部となります。

再現部は第1主題の再現から始まりますが、幾分変形されて展開的に扱われます。行進曲風のエピソードはほぼ型通りに再現されます。提示部同様に再度、第1主題が再現されますが、クライマックスに向けての高揚がこの直後から始まります。この流れは一旦止まりそうになりますが、すぐに再開し力強く次第に高揚していきます。そして第2主題が勝利の賛歌のごとく雄大に歌われ、最高潮に達したのち、コーダへと突入します。コーダでは第1主題のリズムを中心に据えて、オーケストラ全体による強烈な和音の連打で華やかに曲を閉じます。

 

さて、かずメーターですが、

第一楽章 82点

第二楽章 92点

第三楽章 98点

第四楽章 95点

最初この曲に出会ったときは「いい曲見っけ!」って感じでした。私の身近のオーケストラをやっている人も知らなくて、ちとエバってしまったものです(笑) 若干第一楽章が分かりにくいのですが第二楽章からは気分を良くさせてくれると思います。この点同じロシアのチャイコフスキーとは大違いです。

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お勧めのCDです。