交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ハイドン 交響曲第60~62番

さて、今回はハイドン交響曲第60~62番についてお話します。

 

最初に、60番。

交響曲第60番ハ長調 Hob.I:60は、ハイドンが1774年ごろに作曲した交響曲です。

フランスのジャン=フランソワ・ルニャール(英語版)の喜劇「ぼんやり者」(Le Distrait、1697年)をドイツ語に翻案した「迂闊者」(Der Zerstreute、全5幕)のために書かれた付随音楽をそのまま交響曲にしたもので、そのため他のハイドン交響曲と異なり6楽章から構成されます。曲は喜劇の内容を反映して諧謔に富み、また民謡風の部分が多いものです。

日本語では、迂闊者、愚か者、うつけ者、迂闊な男、うっかり者、うすのろなどと訳されています。

自筆原稿は存在しませんが、古い筆写譜に「迂闊者」(Il Distratto)または「喜劇『迂闊者』のためのシンフォニア」(Sinfonia per la Comedia intitolato il Distratto)と注記されています。この喜劇は5幕から構成され、カール・ヴァール(Karl Wahr)一座によって1774年にエステルハーザで上演されました。このときハイドンは劇付随音楽として序曲・各幕の間の間奏曲(4曲)、および終曲を作曲しました。これを交響曲の形にまとめたのが本曲です。

この曲はハイドンの生前非常に人気がありました。1774年11月のブラチスラヴァでの演奏は大成功と伝えられています。しかし晩年のハイドンはあまりこの曲のことをよく思っていなかったらしく、1803年にマリア・テレジア(フランツ2世の皇后)がウィーンで演奏するためにハイドンに楽譜を要求したとき、ハイドンはヨーゼフ・エルスラー(エステルハージ家のオーボエ奏者)あての手紙でこの曲を「古いシュマーン」(den alten Schmarrn)(シュマーンはオーストリアの食べ物の名だが、「愚にもつかないもの」という意味もある)と呼んでいます。

変則的な6楽章制の曲です。抒情的で静かな音楽の途中で、ふざけた、茶化すような曲想が乱入してきたり(第2楽章および第5楽章)、和声法の反則が冒されたり(第4楽章)、バルカン半島ハンガリーの民俗音楽の粗野な一面が誇張されたり(第3楽章および第4楽章)と、堅苦しくない性格が何かと打ち出されています。これらは、原作となったドタバタ劇の主人公の、うっかりした性格に関連しています。

第1楽章 Adagio - Allegro di molto
劇の序曲に相当します。2⁄4拍子のおだやかな序奏の後に、3⁄4拍子の高速で華やかな一主題がはじまります。第二主題は弦楽器だけではじまりますが、曲を途中で忘れたかのように同じ音を繰り返しながらピアニッシモまで消え入り(perdendosiと指定されている)、急に思い出したかのようにフォルテッシモで続きが演奏されます。展開部では交響曲第45番(告別交響曲)の冒頭が突然現れます。

第2楽章 Andante
ト長調、2⁄4拍子、ソナタ形式。静かにはじまるように見せかけて、3小節目に管楽器を中心とした変な楽想がフォルテではいってきます。途中で3拍子に聞こえる部分は、フランスの舞曲のパロディで、シスマンによると放蕩者のシュヴァリエを描いたものと言われています。

第3楽章 Menuetto - Trio
途中にフーガ的な部分があります。トリオ部分はハ短調オーボエによる民族音楽風の部分があります。

第4楽章 Presto
ハ短調、2⁄4拍子。弦楽器のユニゾンではじまり、すぐに変ホ長調に変わります。展開部はドローンに乗ったジプシー音楽風の部分があります。最後はハ長調に変わり、賑やかに終わります。

第5楽章 Adagio(di Lamentatione) - Allegro
ヘ長調、2⁄4拍子。第2ヴァイオリンの6連符に乗って、美しい旋律が演奏されますが、途中でティンパニを含む軍楽調のファンファーレによって突然曲が中断されます。これは劇の第5幕の使者の到着を表すものと考えられます。最後は急に速度が増してアレグロになって終わります。

第6楽章 Finale. Prestissimo
非常に速いフィナーレ。冒頭、演奏中にヴァイオリン奏者の調弦が間違っていることに気付いて調弦をやり直すという場面が挿入されています(G弦=ト音をヘ音にして開始(スコルダトゥーラ)、途中でト音に直して演奏を再開します。(サイモン・ラトルバーミンガム交響楽団と共演したディスクでは、指揮者のラトルが口笛を吹いてヴァイオリンの調弦ミスを指摘し、やり直しを合図するという演出がなされています)。

ハ短調で演奏される民謡風の音楽は実際の民謡「夜警」(Der Nachtwächter)から旋律を取っています。

 

次に、61番

交響曲第61番ニ長調 Hob.I:61は、ハイドンが自筆原稿から1776年に作曲されたことが確定されています。ウェブスター(James Webster)によると、1776年4月にエステルハージ家にフルート奏者が雇われているため、それ以降の作品と考えられるといいます。1770年以前に書かれた交響曲第41番以来、久しぶりにフルート入りの交響曲が書かれました。

第1楽章 Vivace
4⁄4拍子。交響曲第43番と同様に、第1主題の最初の1音だけが全奏によるものです。途中、弦のピッツィカートの上を管楽器が8分音符を奏でる部分が印象的です。2回めに管楽器に同じ音型が出てくる時には、今度は弦楽器が半音階を演奏します。

第2楽章 Adagio
イ長調、3⁄4拍子、ソナタ形式。弱音器をつけたヴァイオリンによって、しっとりした主題が演奏されます。

第3楽章 Menuet. Allegretto – Trio
やや長めのメヌエット。トリオ部分はオーボエの独奏と弦楽によるものです。

第4楽章 Prestissimo
6⁄8拍子、ロンド形式の非常に速い舞曲です。

 

最後に、62番

交響曲第62番ニ長調 Hob.I:94は、ハイドン1780年に作曲した4楽章からなる交響曲です。

ウェブスター(James Webster)によると、1780年12月のハイドンの手紙に記されている「2つの新しい交響曲」というのがこの曲と交響曲第74番のことで、1780年の終わりごろに書かれたことがわかります。1781年のクリスマスにフンメル(有名な作曲家とは無関係)によってハイドンの作品18として出版された6曲の交響曲の中に含まれています。

第1楽章には1777年に作曲されたニ長調の序曲(Hob.Ia:7)を再構成して用いています。この曲はすでに交響曲第53番初版の最終楽章(プレスト)にも用いられていましたが、1780年ごろに53番の最終楽章は新しいもの(カプリッチョ)に変えられ、62番の第1楽章に再転用されました。このためにハイドンはフルートのパートを書き足しています。通常の交響曲と異なり、すべての楽章が同じ調で書かれています。ハイドンはこのころ過去の作品を利用していくつかのパスティッチョ交響曲を書きましたが、62番もパスティッチョと呼ばれることがあります。

演奏時間は約21分。

第1楽章 Allegro
2/2拍子(アラ・ブレーヴェ)。主題は下降分散和音ではじまります。

第2楽章 Allegretto
6/8拍子、ソナタ形式。通常ハイドン交響曲は緩徐楽章の調性がほかの楽章と異なりますが、この曲は例外的にニ長調のままです。弱音器をつけたヴァイオリンによって軽やかな主題が演奏され、途中からフルートが加わります。展開部ではヘ長調に変わります。

第3楽章 Menuet - Trio. Allegretto
かなり素朴な音楽です。トリオではト長調に変わり、ファゴットのソロと弦楽器によってシンコペーションのきいた曲が演奏されます。同様のリズムは後に交響曲第92番のトリオでも使われています。

第4楽章 Presto
4/4拍子、ソナタ形式。主題は最初の6小節にわたって短3度音程を重ねた調性のはっきりしない楽句にはじまり、それからようやくニ長調らしくなります。途中でモーツァルトリンツ交響曲第1楽章を思わせるパッセージが現れます。ロンバルド・リズム(英語版)(16分音符+付点8分音符)の使用も特徴的です。再現部では主題の冒頭がチェロに現れます。

 

さて、かずメーターですが、

第60番 85点

第61番 84点

第62番 84点

確かに第60番はメリハリがあって楽しい楽曲です。個人的には第一楽章と第四楽章が好きです。一風変わってはいるのですが、初心者でも楽しめると思いますよ。

第61番、62番は全ての楽章で好感がもてる内容です。もちろんわかりやすい曲です。

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