交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ハイドン 交響曲第23~27番

さて、今回はハイドン交響曲第23~27番についてお話します。

 

最初に、

交響曲第23番ト長調 Hob.I:23は、ハイドン交響曲で、自筆原稿から1764年に作曲されたことがわかっている4つの交響曲交響曲第21番-24番)のうちの1曲ですが、4曲中では楽器編成も楽章構成ももっとも普通であるにもかかわらず、メヌエットに出現するカノンや、終楽章のピアニッシモの終わり方など、いたるところにハイドンらしい工夫があふれています。

第1楽章 Allegro
3⁄4拍子、ソナタ形式。3小節単位の主題による快活な楽章。対位法的な技法が遺憾なく発揮されています。最初の主題から最後の軍隊信号風の部分まで、ホルンの響きが目立つ曲でもあります。

第2楽章 Andante
ハ長調、2⁄4拍子、ソナタ形式。弦楽器のみ演奏です。終始続く低音の3連符や32分音符による合いの手が印象的です。

第3楽章 Menuet - Trio
メヌエット部は高声と低声による1小節遅れのカノン。トリオはハ長調で、第2楽章とおなじく弦楽器のみにより、第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリン・低音による、2小節遅れの3声のカノンを形成しています。

第4楽章 Finale: Presto assai
6⁄8拍子、ソナタ形式。ひたすらトゥッティによるfでの和音の連打と、弦のみによるpでの細かく飛び跳ねるような音型の繰り返し、対比によって構成、展開されています。最後はppとなりさらにピチカートになり、消えるように終わります。

 

次に、

交響曲第24番ニ長調 Hob.I:24は、ハイドンの1764年作曲で初期の作品ですが、随所にハイドンらしい工夫がなされています。第2楽章でフルートが活躍します。

交響曲第21番から24番までの4曲は自筆原稿が残っていて、1764年に作曲されたことが判明しています。いずれも4楽章形式で、うち23番と24番は両端楽章が速い通常の形式となっています。

エステルハージ家の副楽長時代(1761-1765年)のハイドン交響曲のうちには、独奏楽器が協奏曲的に活躍する楽章を含むものがいくつかありますが、この曲もそうした交響曲のひとつです。

第1楽章 (Allegro)
4⁄4拍子、ソナタ形式。弦楽器の伴奏にオーボエとホルンが祝祭的な第1主題を提示し、開始されます。それを全合奏で確保し、華やかに進行します。同じ音型で展開される展開部の終わりにはフェルマータの休符が書かれ、休止すると、第1主題が短調でしかも静かに再現されるなど、ドラマチックです。

第2楽章 Adagio
ト長調、3⁄4拍子、二部形式。オーボエとホルンは休みで、弦楽器は伴奏に徹し、カンタービレ(cantabile)と記された独奏フルートが終始旋律を吹きます。カデンツァ部も用意され、明らかにフルート協奏曲といえる形を備えている(Entwurf-katalogに記載のあるフルート協奏曲ニ長調 Hob.VIIf:1の第2楽章、ト長調のアンダンテとの類似性が指摘されています)。

第3楽章 Menuetto - Trio
オーボエの合いの手のバックに弦楽器がピチカートを奏し、効果的です。トリオではフルートとホルンが主旋律をなぞります。

第4楽章 Finale: Allegro
4⁄4拍子、ソナタ形式。ppの最弱音で開始されるなど、この時代にとって斬新で、強弱の変化に富んでいます。

 

続いて、

交響曲第25番ハ長調 Hob.I:25は、ハイドンの初期の交響曲ではあるが、エステルハージ家の副楽長時代のものか、それ以前モルツィン伯爵に仕えていた時代のものかは明らかではありません。

3楽章構成の交響曲ハイドンの初期には多いのですが、この曲のように緩徐楽章を欠くものはほかに例がありません。そのかわり第1楽章に長めの序奏が附属します。すべての楽章が同じ調性で書かれています。

演奏時間は約14分。

第1楽章 Adagio - Allegro molto
アダージョの序奏は4⁄4拍子で、23小節からなります。弦楽器で主題が対位法的に出現し、終わりそうで終わらない(フェルマータが2回出現する)、やや不思議な音楽になっています。序奏の後に2⁄4拍子のアレグロにはいるが、こちらは明るくごく単純なソナタ形式の曲です。低音楽器の刻みに乗って上昇分散和音の主題が出現します。再現部の第2主題はかなり変形されています。

第2楽章 Menuet - Trio
メヌエット主部はトリル、付点つきリズム、三連符などを組み合わせた、はずんだ音楽です。トリオでは弦楽器のピッツィカートによる素朴な伴奏に乗ってオーボエとホルンが旋律を演奏します。

第3楽章 Presto
2⁄4拍子、ソナタ形式。二分音符による4つの音を主題とします。短い展開部のはじめでは第2ヴァイオリンが第1ヴァイオリンを1小節遅れて追いかけ、再現部のはじめでは低音が第1ヴァイオリンの主題を2小節遅れて追いかける対位法な手法が使われています。

 

続いて、

 交響曲第26番ニ短調『ラメンタチオーネ』(伊: Lamentatione)はハイドンが1768年ごろに作曲した交響曲です。この時代の交響曲としては珍しくメヌエットで終わる3楽章で構成され、第1楽章と第2楽章に受難週と関係する音楽を引用しているところに特徴があります。

 この作品の自筆原稿は残っておらず、正確な作曲年代は不明です。3楽章構成であることもあり、かつては初期の1765-1766年ごろの作品とされていましたが、エントヴルフ・カタログ(草稿目録)上の位置や様式などの研究により、現在ではもっと新しい1768-1769年ごろの作品と考えられるようになりました。ハイドンのいわゆるシュトゥルム・ウント・ドラング期にあたり、この時期には短調交響曲が多数作曲されたが、本作もその一つにあたります。

ハイドンの初期の交響曲には3楽章形式のものが少なくないが、1765年以降では本曲と交響曲第30番「アレルヤ」の2曲だけです。この2つの交響曲はどちらも典礼音楽を引用した宗教的交響曲であり、通常のようにエステルハージ邸で演奏されたわけではなく、教会で演奏するために作曲されたと考えられます。4楽章形式でないのもそのことと関係があるかもしれません。

現存最古の筆写譜にはすでに「受難と哀歌」(Passio et Lamentatio)と記されています。第1楽章には当時のオーストリアの受難劇でよく使われていた音楽を引用しています。第2楽章にはエレミヤの哀歌の音楽が引用されます。

第1楽章 Allegro assai con spirito
4⁄4拍子。シンコペーションのリズムによる感情の表出という手段は、モーツァルト交響曲第25番と共通しています。第2主題として第1オーボエと第2ヴァイオリンにグレゴリオ聖歌の受難コラールが現れ、第1ヴァイオリンが修飾します。再現部では第2主題がニ長調に転調し、ホルンも加わって演奏されます。ニ長調になるのは第2主題が引用であるために短調にしたくなかったことも理由にあるのでしょうが、当時の短調交響曲の第1楽章では再現部が短調になるのが通常であり、長調で終わるのは当時のハイドン交響曲では他に例がありません(後の交響曲第80番以降は長調で終わる)。

いきなり立ち止まったり、突然な曲想の変化や転調などドラマチックな構成故に、展開部以降の形式的な反復記号を欠いています。

第2楽章 Adagio
ヘ長調、2⁄4拍子、ソナタ形式。第2オーボエは休止します。第1オーボエと第2ヴァイオリンにグレゴリオ聖歌のエレミヤの哀歌のコラールが引用され、第1ヴァイオリンが対旋律やまとわりつくような16分音符の音型で絡め、低弦は規則正しく刻みます。第2主題はコラール主題をハ長調に移しただけです。第1楽章と同じく再現部からはホルンも主題を歌います。これは「インチピト・ラメンタチオ(哀歌が始まる)」という旋律であり、ハイドンはこの旋律をこの曲の他にもしばしば用いています(ランドンによると、1760年ごろに作曲されたヘ長調の管楽ディヴェルティメント(Hob.II:23)、交響曲第45番のトリオ、交響曲第80番のトリオなどで使われているそうです)。

第3楽章 Menuet - Trio
メヌエット部は2対1のリズム、ナポリの6の和音や突然の休止などが印象的です。後半は緊迫した転調を繰り返し、前半に登場した16分音符の動機を使用した低声部主体のカノンとなって再現され、盛り上がります。トリオはニ長調となり、3拍目が強奏される特徴的なフレーズの後にヴァイオリンが音階を下降する独創的な主題が特徴的です。

 

最後に、

交響曲第27番ト長調Hob.I:27はハイドンが1760年ごろに作曲した交響曲で、エステルハージ家以前、ボヘミアのモルツィン伯爵に仕えていた時期の曲のひとつと考えられています。初期の交響曲に多い、急緩急の3楽章形式を取っています。

演奏時間は約14分。

第1楽章 Allegro molto
4⁄4拍子、ソナタ形式。二分音符の上昇分散和音による明るい第1主題ではじまります。

第2楽章 Andante: Siciliano
ハ長調、6⁄8拍子、ソナタ形式。初期のハイドンの曲のほとんどと同様、緩徐楽章は弦楽器のみで演奏されます。低音楽器のピッツィカートの上で、弱音器をつけたヴァイオリンがシチリアーナのリズムをもつ旋律を演奏します。

第3楽章 Finale: Presto
3⁄8拍子、ソナタ形式。ごく短い簡単な曲です。

 

さて、かずメーターですが、

第23番 85点

第24番 80点

第25番 82点

第26番 82点

第27番 83点

トータルでいい曲が並んでいます。モーツァルトほどの遊びはありませんが、さすがハイドン!と言いたくなるような旋律がちりばめられています。

ハイドンってバッハからベートーヴェンへの橋渡しをした人で、いわゆる「交響曲過渡期」の曲を多く輩出しており、実験的ではありますが優れた曲を書いています。

全百何曲を聴きましたが、劣悪な曲は1曲もなく、そのへん、さすがハイドン先生と感心させられてしまいます。

 

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