交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ハイドン 交響曲第63~65番

さて、今回はハイドン交響曲第63~65番についてお話します。

 

最初に、第63番

交響曲 第63番 ハ長調 Hob.I:63は、ハイドンが1779年以降1781年以前に作曲した交響曲です。

1779年11月18日にエステルハーザのオペラ劇場は火災に遭い、所蔵していた楽譜が失われました。ハイドンはウィーンから自作の筆写譜を購入し、それを元に何曲かのパスティッチョ交響曲を作って演奏の用に充てました。交響曲63番もこのときに作られたパスティッチョ交響曲のひとつであり、第1・第2楽章に1777年ごろに作曲された曲を再利用しています。

第1楽章はオペラ『月の世界』(1777年)の序曲を転用したものです。第2楽章には「ラ・ロクスラーヌ」(La Roxelane)という副題がついており、やはり1777年にエステルハーザで上演された『ソリマン2世』(Soliman der zweyte)の付随音楽の転用と考えられていますが(ロクスラーヌはこの劇の登場人物の名前)、新規に作曲された可能性もあります。

最終楽章にはプレスティッシモの版とプレストの版の2種類がありますが、前者は1773年ごろに作曲された交響曲断片の再利用で、上演日が迫っていたため、大急ぎで仕上げたことが推察されます。その後まもなく新しい最終楽章が作曲されました。

第1楽章 Allegro
3⁄4拍子。歌劇「月の世界」序曲の転用で、原曲からファゴット1本、トランペット2本、ティンパニが外され、フルートが付け加えられています(エステルハージ家の楽団は1778年4月から1780年末までファゴット奏者がひとりしかいませんでした。また1778年4月からフルート奏者が加わりました)。明るくわかりやすい曲です。

第2楽章 「ラ・ロクスラーヌ」 Allegretto (o più tosto allegro)
2⁄4拍子、変奏曲形式。C.S.ファヴァール(英語版)作の劇「ソリマン2世、あるいは3人のスルタンの妻」の付随音楽を転用しています。ヴァイオリンには弱音器がつけられています。ハ短調ハ長調の2つの部分が交替し、最後は全奏によって華やかに終わります。

第3楽章 Menuet - Trio
メヌエットは三連符による修飾のついたわかりやすい曲です。トリオはオーボエファゴットの二重奏、および弦楽器のピッツィカートによるものです。

第4楽章 Finale: Presto
2⁄4拍子、ソナタ形式の快速な曲。

 

次に、第64番

交響曲第64番 イ長調 『時の移ろい』は、ハイドンが1773年頃に作曲した交響曲です。

この曲はブライトコプフ社の1778年のカタログに現れています。自筆譜は残っていませんが、フランクフルト・アム・マインで発見された、明らかにエステルハージ家で使われたパート譜が残っており、使用された紙の研究から1773年ごろのものであることがわかりました。

このパート譜のカバーにラテン語で「Tempora mutantur」(テンポラ・ムータントゥル、時は変わる)という謎めいた言葉が書かれていました。ジョナサン・フォスターによれば、これはエリザベス朝のウェールズのエピグラム作家ジョン・オーウェン(John Owen)による有名な句の冒頭で、全文は「時は変わり、我々も時の中で変わる。どのようにか。人は時とともに悪くなる。」というものであるといいます。この句がハイドンの音楽とどう関係するかは議論があり、ジョナサン・フォスターはこの句を最終楽章と関係があるものと考えましたが、エレーン・シスマンは第2楽章と関係があると考えました。

第1楽章 Allegro con spirito
4⁄4拍子。ピアノとフォルテの激しい交替を特徴とする曲です。終結主題がかなり変わっています。

第2楽章 Largo
ニ長調、3⁄4拍子。弱音器をつけたヴァイオリンによる旋律を中心とするものです。きわめて風変わりな曲で、カデンツが期待される場所がことごとく休符になっており、解決が延び延びにされてひどく落ち着かないものです。最後はホルンの極端に低い音が使われ、静かに終わります。

第3楽章 Menuet - Trio. Allegretto
ロンバルド・リズム(英語版)(16分音符+付点8分音符)が多用されます。トリオは素朴なレントラー風の音楽になっています。

第4楽章 Presto
2⁄2拍子(アラ・ブレーヴェ)、ロンド形式の流れるような快速なフィナーレ。ロンドの主題が終わる前に突然新しいエピソードが挿入されます。ロンド主題も単純に繰り返されるわけではなく、転調したり展開したりします。

 

最後に、第65番

交響曲第65番イ長調 Hob.I:65は、ハイドン交響曲で1778年のブライトコプフ社の目録に記載がありますが、作曲されたのはそれよりもかなり早いようです。正確な作曲年代は不明ですが、60番台の他の交響曲より早い時代に作曲された考えられています。通常は1771-1773年ごろの作品とされますが、ウェブスター(James Webster)によると、緩徐楽章でヴァイオリンが弱音器をつけていないことや、1768年ごろに書かれた交響曲第59番との類似などによって、もっと早い時期の作品であると考えられています。

ハイドン交響曲の中では従来ほとんど知られていなかったが、シュトルム・ウント・ドラング期の作品のひとつとして鑑賞されるようになってきています。

第1楽章 Vivace e con spirito
全奏による3つの和音ではじまる、明るい祝祭的な音楽です。再現部は提示部と大きく異なっています。

第2楽章 Andante
ニ長調、3⁄8拍子。第1ヴァイオリンによって始められますがが、すぐにオーボエとホルンによるファンファーレ風の楽句によって遮られます。同じ音をえんえんと繰り返したり、かなり風変わりな曲です。

元は劇の付随音楽だったとランドンは推測しています。

第3楽章 Menuetto - Trio
途中で4拍子になる奇怪なメヌエットです。トリオはイ短調で、弦楽器のみによって演奏されますが、こちらも途中でヘミオラの連続によって3拍子に聞こえなくなる箇所があります。

第4楽章 Finale. Presto
12⁄8拍子、ソナタ形式。ホルンによる狩りの信号ではじまる軽快な音楽です。

 

さて、かずメーターですが、

第63番 84点

第64番 82点

第65番 82点

たぶん、第63番が一番取っつきやすい曲だと思います。いろんな番組のBGMにも使われているので親しみやすい旋律です。それに対し第64番、第65番は説明にもあるものの、ちょっとハイドンを聞いている方にすれば違和感のある旋律が点在しています。それが聴きなれないと思わなければ全く問題ない曲ですし、決して変な曲ではありませんので十分楽しめる曲です。

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