ショスタコーヴィチ 交響曲第8番
さて、今回はショスタコーヴィチの交響曲第8番についてお話します。
交響曲第8番 作品65は、ショスタコーヴィチが作曲した8番目の交響曲です。
交響曲第7番『レニングラード』につづいて、交響曲で戦争を描くべく作曲されましたが、第7番と比べるとあまりにも暗いため、当初の評判は非常に悪かったようです。スターリン賞受賞もされず、1948年にはジダーノフ批判の対象となり、1960年まで演奏が禁止されました。しかし、戦争の悲惨さを描き、かつての音楽技法を駆使したレベルの高さゆえに最近ではショスタコーヴィチの最も注目すべき作品のひとつとされており、録音の数も増えてきています。
スターリングラード攻防戦の犠牲者への墓碑として、1943年の7月2日から9月9日にかけて、モスクワの「創作の家」で一気呵成に書き上げられました。彼自身戦争に対する思索と戦後への希望を描こうとしましたが、悲惨な戦場の報道やニュース映画に触れていたこともあり作品自体が悲劇的な性格となりました。
戦局が好転していたこともあって、発表当時評価をめぐって賛否両論となりました。作曲家同盟の総会では、チモフェーエフが「前作の勝利の主題が踏襲されず、辛い体験や悪による苦痛とが乗り越えたり打ち勝つこともなく、代わりにパッサカリアとパストラーレに置きかえられている。」との非難を決議する事態となりました。ショスタコーヴィチ自身もこのような非難に対する懸念があったのか、発表当時には「赤軍の勝利に関わる喜ばしいニュースの影響がない筈はない。多くの内的な、また悲劇的、ドラマティックな葛藤があるが、全体としては楽観主義的な人生肯定的な作品である」と述べていたり、一方では自作には一切触れることなくペシミズムと偉大な悲劇の相違を力説し、チャイコフスキー、チェーホフ等を例にとって、ソ連で誤解されていることを問題に挙げたりしていました。（この2つの発言は、13年後の1956年にスターリンの死の年に内容的に関係づけられ、作品の意図は訂正されました。）
作品は1943年9月21日にまず芸術問題委員会のメンバーに紹介されたうえで、同年の11月14日に、モスクワ音楽院大ホールでエフゲニー・ムラヴィンスキーの指揮するソヴィエト国立交響楽団によって初演されました。国外初演は、翌年の1944年の4月2日にロジーンスキー、4月21日にボストンでクーセヴィツキー、5月26日にメキシコでチャベス、7月23日にロンドンでウッドの指揮でそれぞれ行われています。当時の戦況を反映して「スターリングラード交響曲」の名称で呼ばれていました。
5つの楽章から構成され、演奏時間は約60分。
第1楽章
Adagio - Allegro non troppo - Allegro - Adagio 4/4拍子
約30分。自作の交響曲第5番の第1楽章と同様、アーチ型のソナタ形式に基づくと考えられる。
この曲で最も長い楽章です。低弦の力強い序奏に続いて、引きずるようなシンコペーションを伴奏とした沈痛な表情を湛えた第1主題が提示されます。これに続いて、4分の5拍子のきわめて内省的な第2主題、チェロを主体としたメランコリックな第3主題が現れます。第3主題が静かに消え入りそうになっていったところに、木管が第1主題の転回形によって割り込み、アレグロ・ノン・トロッポの展開部が猛烈に突進します。これに続いて弦楽器の悲痛な第3主題の展開が始まり、ティンパニやスネア、トランペットの3連音が加わって凶暴性を増します。木管の激しいトリルを背後に第2主題が金管によって強烈に吹奏され、これが爆発すると3連音の動機からアレグロへと速度を増します。暴力性と皮肉さを兼ね備えながら盛り上がっていき、変拍子の行進曲風のクライマックスを経て、ドラムの長いロールがクレッシェンド・ディミヌエンドを繰り返しながら冒頭の序奏主題が再現されます。再現部では弦楽器のトレモロの上でイングリッシュ・ホルンが第3主題・第2主題の順に長いソロで再現し、印象を深めます。これに弦楽器が続き、静かに序奏の動機が現れると、トランペットがこれを強奏し、シンコペーションとともに第1主題が弦に戻ってきて、これを幾分慰めをもった響きで奏しながら静かに楽章を終えます。
第2楽章
Allegretto スケルツォ、4/4拍子
力強くも、おどけた雰囲気を感じさせます。単調な主題（ドイツの流行歌『ロザムンデ』のパロディと作曲者自身の作『ジャズ組曲第2番』の引用）の反復と変形を経て結ばれます。
第3楽章
Allegro non troppo 2/2拍子
弦の機械的なリズムが繰り返される中、様々な楽器がファンファーレ風の旋律を奏でます。次第に凶暴なものになり、トランペットの勇壮なギャロップを挟んで頂点で全楽器が爆発して、小太鼓の響きともにこの曲の中でも最大のクライマックスを築き、そのまま次の楽章に続きます。
第4楽章
Largo パッサカリア、4/4拍子
前楽章のクライマックスを受け継いで、凶暴な音楽が繰り返されるも、突如として静かなものになり、ゆっくりと葬送風の音楽が繰り返されます。主題は第一楽章の反復主題に基づいたものです。内省的で暗い、悲痛な雰囲気の中、次の楽章に続きます。
第5楽章
Allegretto - Adagio - Allegretto 3/4拍子
ロンド・ソナタ形式。前の楽章から一転して田園舞曲風の、楽天的な主題がファゴットに現れます。その後チェロによる第1エピソード、チェロとバス・クラリネットの主題による第2エピソードを経て、フガートが展開されます。やがて第一楽章のクライマックスが回想され、暗い雰囲気が続くが、だんだん音楽は穏やかになり、明るい主題が戻ります。勝ち戦を表すかのように盛り上がるも、徐々に速度を落とし、戦争はまだ続くかのように全曲は静かに終結します。
さて、かずメーターですが、
第一楽章 80点
第二楽章 76点
第三楽章 78点
第四楽章 76点
第五楽章 80点
第一楽章を聴き始めたとき、おぉ、いい感じじゃないと思ったとたん、暗闇に突き落とされたような感じになります。それがずるずると第五楽章まで続き、第五楽章途中で少々盛り上げり、そのまま終了…とても気持ち悪くなりました。まぁいつまでも継続する戦争を表現したいようなのですが如何せん暗すぎます。いろいろ楽譜上では技法を使っているのでしょうが、低く小音での演奏なので何もわかりません。
残念ながらおすすめできない曲です。
