交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ショスタコーヴィチ 交響曲第10番

さて、今回はショスタコーヴィチ交響曲第10番についてお話します。

 

交響曲第10番作品93は、ショスタコーヴィチが1953年に作曲した交響曲です。

15曲あるショスタコーヴィチ交響曲のうち、傑作とされる作品のひとつと言われています。

自分のドイツ式の綴りのイニシャルから取ったDSCH音型(Dmitrii SCHostakowitch)が重要なモチーフとして使われています。この音型が『ショスタコーヴィチの証言』でスターリンの音楽的肖像などであるとされた第2楽章までは現れず、第3楽章になってから現れ始め、第4楽章に至るとあらゆる場面で用いられることからも、スターリン体制が終焉し解放された自分自身を表現しているのではないかとも言われています。

ピアノ連弾版も存在し、作曲者がミェチスワフ・ヴァインベルクと共に1954年に演奏した自作自演録音が残っています。

1948年のジダーノフ批判により、ショスタコーヴィチは苦境に追い込まれることとなりました。その一因には、交響曲第9番を聞いたスターリンが、ベートーヴェン交響曲第9番のような作品を期待していたにもかかわらず、その期待とは全く異なる軽妙洒脱な作品であったため激怒したことが関係しているそうです。

ショスタコーヴィチはその時期には映画音楽や『森の歌』などを発表し、非難を避けるべく当局に迎合するかのようにふるまい、1953年のスターリンの死の直後、いわゆる雪どけの時代の直前にこの曲を発表して問題となりました。

交響曲第9番までは、ほぼ2年に1曲のペースで交響曲を発表していたショスタコーヴィチだったが、この交響曲第10番が発表されるまで交響曲第9番の発表後8年も経過しています。作曲は、スターリンの死後に短期間に完成されたといわれていますが、スターリンの存命中の未完成の作品に同一の旋律があることから、すでに完成していたが、スターリンの死後まで交響曲の発表を待たなければならなかったからという説もあるそうです。

ソビエトの楽壇では、この曲の評価に関して賛否両論に真っ二つに分かれてしまい、この問題に関して3日間に渡る討論会が行われたほどでした。なお、ショスタコーヴィチ自身は「この作品は欠点が多いがそれでも可愛いものだ」と余裕の発言を残しています。

アメリカでは同国における初演権争いも起こっています。 また、カラヤンが録音した唯一のショスタコーヴィチ作品でもあります。カラヤンショスタコーヴィチに親近感を抱いており「私は作曲をしないが、もししたとしたらこのような曲を書いただろう」と語っています。この作品にはよほどの自信があったようで、1969年のソビエト公演の際、ショスタコーヴィチムラヴィンスキーの前で演奏しています。この時、ショスタコーヴィチは「こんなに美しく演奏されたのは初めてです」と評価したそうです(ただし、これが褒め言葉なのかは分からない)。ムラヴィンスキーは「実に感動しました。しかしあなたは自身の演奏をレコードで聴くべきです」と意味深なコメントを発しています。

作品の解釈には様々な意見が見られます。作曲者自身は1947年に教え子のカラ・カラーエフ充ての手紙の中で「戦争三部作の真の完結編は,第9番ではなくこれから作る第10番だ」と書いています。発表後の討論会では、あえて作品の欠点を自ら述べた後に、「一つだけ言わせてほしい。私は人間的な感情と情熱とを描きたかった」とコメントしています。だが、『ショスタコーヴィチの証言』では「あれは、スターリンスターリンの時代について書いたものであった」、第2楽章を「音楽によるスターリンの肖像である」と述べていたり、終楽章の自身を表すDSCH音形の多用などから、スターリン時代を意識したものと考えられています。なお、ソ連の音楽評論家ヤルストフスキーはこの曲の評論で、第1楽章の導入部の動機がリストの『ファウスト交響曲』の旋律と似ており、これを『ファウスト動機』と呼んでいます。またヤルストフスキーは第2楽章を「悪の力」として第1楽章の『ファウスト』的なものと対比させています。作曲家の吉松隆は、やはり『ファウスト交響曲』の旋律の引用がいくつか認められるとして、第1楽章を「ファウスト」第2楽章を「メフィストフェレス」、第3楽章を「グレートヒェン」になぞらえ、さらにそれぞれを「作曲者」「スターリン」「エミリーラ」に当てはまるとの解釈をしています。

この曲は4つの楽章から構成され、古典的な構成をとっています。4つの楽章で構成されているのは、交響曲第7番以来です。演奏時間は約50分。

第1楽章

Moderato 3/4拍子 ソナタ形式

冒頭、低弦で奏でられる順次進行を基調とした第1主題ではD, Esが暗示的に現れます。この主題の断片は他の楽章にも現れ、第3楽章、第4楽章ではDSCH音型に発展します。フルートの低音で現れる第2主題には、第1主題の順次進行との関連性が見られます。 「プーシキンの詩による4つのモノローグ作品91」(1952)の第2曲「 あなたにとって私の名前など」の音型がこの第1楽章に織り込まれています。

第2楽章

Allegro 2/4拍子 スケルツォ

ショスタコーヴィチの証言』によれば、この楽章は「おおざっぱに言って、音楽によるスターリンの肖像である」とされています。冒頭のメトロノーム記号は、二分音符=176という異常なテンポになっていますが、交響曲第5番の終楽章と同様にミスプリントと思われ、四分音符=176なのではないか、という説もありました。ショスタコーヴィチの研究者である音楽学者のソフィア・ヘーントヴァによれば、出版前にヴァインベルクと共に連弾でムラヴィンスキーに聴かせ、ムラヴィンスキーの意見も取り入れつつピアノ譜に書き込んだ数字は四分音符=200であったが、その後オーケストラでのリハーサル後、出版前の総譜に書かれた数字は二分音符=116であったといいます。

冒頭の主題には、第1楽章第1主題の断片が現れます。また、第1主題がムソルグスキーのオペラ『ボリス・ゴドゥノフ』の冒頭部に類似しており暴君の圧制を描いたものと解釈されます。トリオのない、最後までオーケストラが疾走するかのように暴れまわるスケルツォで、中間部の荒々しい行進曲を経て、再現部に入り一気呵成に終わります。

第3楽章

Allegretto 3/4拍子 三部形式

次の3つの主題が認められます。1つ目は冒頭に現れる不気味さの漂う楽想。この楽想にはDSCH音型が一音違えて潜んでいます。2つ目はDの連呼で始まり、更にはっきりとDSCH音型が現れる舞曲風楽想です。3つ目はホルンで奏でられるミラミレラ(EAEDA)という音型です。この楽句はマーラーの『大地の歌』の冒頭を模したもので、漢詩(李白の「悲歌行」)に基づく死の警告等であり、ショスタコーヴィチは「これは墓場からの大猿の叫び・・・」「あなたの名前を曲の中に転写した」とナジーロヴァへの手紙に書いていました。『大地の歌』へのオマージュと解する説もあります。また、この音型はドイツ式音名とフランス式音名を組み合わせると“E L(a) Mi R(e) A”とも読めることから、ショスタコーヴィチが親密に文通していたモスクワ音楽院の教え子エルミーラ・ナジーロヴァのイニシャルを表わすともいわれています。この2つの動機が絡み合いながらクライマックスを到達します。終結部(496小節)はDSCH音型そのものです。

第4楽章

Andante - Allegro 6/8 - 2/4拍子 ソナタ形式

序奏のアンダンテでは低弦が陰鬱なつぶやきを歌い、それはオーボエ、フルート、ファゴット木管に引き継がれます。 67小節からクラリネットの短いファンファーレによってアレグロの主部に入り一転して曲調は力強く明るくなります。このファンファーレは序奏で予告されていたものであり、これが第1主題のフレーズの音型となります。ロンド・ソナタ形式と見た場合、ここには2つの主題が認められ、A-B-Aの形をとります。第2主題は弦楽器による力強いト短調の旋律から始まりますが、調は一定せず、そのまま展開部へとつながります。 展開部は、序奏や提示部の主題が変形されて発展を続けますが、次第に第2楽章のような狂気を帯び、その頂点で、トゥッティの最強奏でD, S(Es), C, Hが鳴り響きタムタムが強打されます(385小節)。 ティンパニーのトレモロが続く中、序奏が再現されますが、度々DSCH音型に中断させられます。そのうちに軍楽隊のような打楽器の伴奏に合わせて、ファゴットが第1主題を少しおどけたように再現を始める。その後、主題AとBが重なりながら発展し、ホルンのDSCH音型によって第2主題に入る。ここではホ短調で、そして大変短いものです。 コーダは、主に第1主題の2つの主題によってまとめられ、最後はホルン(603小節)、トロンボーン(612小節)、ティンパニ(641小節と654小節)がDSCH音型を輝かしく強奏します。

 

さて、かずメーターですが、

第一楽章 84点

第二楽章 83点

第三楽章 86点

第四楽章 87点

ぶっちゃけ第9番がおちゃらけた曲だったので戦争3部作の最後、これでいいの?って思っていましたが、面目躍如!ショスタコーヴィチも言っていますがこれが3部作の最後の曲なんでしょうね。

序盤は暗く重い雰囲気で演奏されますが、だんだん力強さがみなぎっていく。それも前衛的な旋律ではなく、一般の人にも聞きやすい旋律で迫ってくるのです。これはいいです。

このコメント書く前に2回聞いたのですが、「DSCH音型」というのがわからなかったので、復習してみたいと思います。

でもこの曲、私の生まれる10年前の曲なんですよね。そう考えるとすごいなぁ。

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