交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

チャイコフスキー 交響曲第6番

今回はチャイコフスキー交響曲第6番についてお話します。

チャイコフスキー最後の大作で、その独創的な終楽章をはじめ、彼が切り開いた独自の境地が示され、19世紀後半の代表的交響曲のひとつとして高く評価されています。

副題については、弟モデストが初演の翌日に自身が「悲劇的」という表題を提案したが、作曲者はこれを否定し、次に弟が口にした「悲愴」という言葉に同意したと伝えていますが、これはモデストの創作で事実ではないそうです。実際は自筆譜、楽譜の出版をしていたピョートル・ユルゲンソンがチャイコフスキーに送った手紙で「《第6悲愴交響曲》よりも《交響曲第6番 悲愴》とするべきだと思います」と書いているなど、少なくとも曲が完成した9月には作曲者自身がこの題名を命名していたことが分かっています。また初演のプログラムに副題は掲載されていませんが、チャイコフスキーがユルゲンソンに初演の2日後に送った手紙で「Simphonie Pathétique」という副題をつけて出版することを指示しています。

10月18日付のその手紙の内容とは「この交響曲のタイトルページに次のように書いてください。「ウラディミール・リヴォヴィチ・ダヴィドフに。悲愴交響曲(第6番)作品番号??? P.チャコフスキー作曲」間に合えばいいのですが! この交響曲で妙なできごとがありまして、問題というほどではないですがちょっと戸惑っています。私自身はこれまでのどの作品よりもこれを誇りに思っていますし、土曜日にモスクワに行きますので相談しましょう。お元気で。P.チャイコフスキー」(原文ロシア語)でした。

モデストはこの曲のテーマとしていくつかの証言を残していますが、作曲者自身は「人生について」としか語っていません。リムスキー=コルサコフの回想によれば、初の演奏会の休憩中にチャイコフスキーにその点を確かめてみた時には「今は言えないな」と答えたと言います。

チャイコフスキーは26歳から52歳までの間に12回のうつ病期を経験したといいます。『悲愴』作曲時には過去を思い浮かべたのか、それとも当時もうつ病を患っていたのか、うつ的な精神状態を曲に反映させているのではないかという説があります。ドイツの精神科医ミューレンダールは、精神病院の入院患者に対して各種の音楽を聞かせるという実験を行ないましたが、悲愴を流した場合、特に内因性うつ病患者の症状が悪化し、患者によっては自殺しようとしたとのことです。

チャイコフスキー自身は世評を気にしがちなタイプでしたが、ことこの曲については最終楽章にゆっくりとした楽章を置くなどの独創性を自ら讃え、初演後は周りの人々に「この曲は、私の全ての作品の中で最高の出来栄えだ」と語るほどの自信作だったそうです。

コンスタンティン・コンスタティノヴィチ・ロマノフ大公爵に宛てた手紙(1893年9月21日付)では「私はこの交響曲に魂のすべてを注ぎこみました……。(中略)形式としては独創性を示しており、フィナーレは普通よくあるアレグロではなく、アダージョのテンポで書いています。」

チャイコフスキーの又甥のゲオルギイ・カルツォーフの妻で歌手であり、作品47が献呈されているアレクサンドラ・V・パナーエワ=カルツォーワの回想録「P・I・チャイコフスキイの思い出」には、チャイコフスキーが本作の初演後、従姉妹のアンナ・ペトローヴナ・メルクリングを家まで送る道中、アンナ・ペトローヴナに対して「新作の交響曲が何を表現しているか分かったか」と尋ね、彼女が「あなたは自分の人生を描いたのではないか」と答えたところ「図星だよ」と言ってチャイコフスキーは喜んだと記しています。チャイコフスキーはアンナ・ペトローヴナに対して「第1楽章は幼年時代と音楽への漠然とした欲求、第2楽章は青春時代と上流社会の楽しい生活、第3楽章は生活との闘いと名声の獲得、最終楽章は〈De profundis(深淵より)〉さ。人はこれで全てを終える。でも僕にとってはこれはまだ先のことだ。僕は身のうちに多くのエネルギー、多くの創造力を感じている。(中略)僕にはもっと良いものを創造できるのがわかる」と話したと述懐しています。

 

チャイコフスキーは1891年に着想を得た変ホ長調交響曲(自身で『人生』というタイトルをつけていた)を途中まで書いたところで、出来ばえに満足出来ず破棄し、ピアノ協奏曲第3番に改作しました(未完に終わる)。しかしこの「人生」というテーマは彼の中で引き継がれていたようで、既に名士となり多忙な生活の中、新しく交響曲を書き始めました。

残されている資料によれば1893年2月17日(第3楽章)に作曲に着手したようです。作業は急ピッチで進められ、それから半年後の8月25日にはオーケレストレーションまで完成し、同年10月16日(グレゴリオ暦では10月28日)に作曲者自身の指揮によりサンクトペテルブルクで初演されました。あまりに独創的な終楽章もあってか、初演では当惑する聴衆もいたものの、先述するようにこの曲へのチャイコフスキーの自信が揺らぐことはなかったようです。

しかし初演のわずか9日後、チャイコフスキーコレラ及び肺水腫が原因で急死し、この曲は彼の最後の大作となりました。

 

第1楽章 Adagio - Allegro non troppo - Andante - Moderato mosso - Andante - Moderato assai - Allegro vivo - Andante come prima - Andante mosso

序奏付きソナタ形式ロ短調
本人が語ったようなレクイエム的な暗さで序奏部が始まります。序奏部は主部の第1主題に基づいたものです。やがて第1主題が弦(ヴィオラとチェロの合奏だが、両パートの奏者の半分のみでどこか弱弱しい)によって現れます。この部分は彼のリズムに関する天才性がうかがえます。木管と弦の間で第1主題が行き来しながら発展した後、休止を挟んで第2主題部へ入ります。提示部の第2主題部はそれだけで3部形式の構造を取っており、その第1句は五音音階による民族的なものですが、甘美で切ない印象を与えます。3連符を巧みに使ったやはり淋しい主題の第2句をはさみ、再び第1句が戻り、pppppp という極端な弱音指定で、静かに提示部が終わります。

打って変わってffの全合奏でいきなり始まる展開部はアレグロ・ヴィーヴォで強烈で劇的な展開を示します。第1主題を中心に扱い、その上に第2主題第1句の音階を重ねていきクライマックスを形成していきます。一端静まると、弦に第1主題の断片が現れ、再現部を導入し、第1主題がトゥッティで厳しく再現されます。再現部に入っても展開部の劇的な楽想は維持されたままで、木管と弦が第1主題の変奏を競り合いながら、そのままクライマックスの頂点に達します。ここで苦悩を強めた絶望的な経過部が押しとどめる様に寄せてきて、第1主題に基づいた全曲のクライマックスとも言うべき部分となり、ティンパニ・ロールが轟く中、トロンボーンにより強烈な嘆きが示されます。やがてロ長調で第2主題が現れるが再現は第1句のみで、そのまま儚いコーダが現れますがもはや気分を壊さず、全てを諦観したような雰囲気の中で曲は結ばれます。

演奏時間は16分から17分(ムラヴィンスキーマゼールネーメ・ヤルヴィ等)のものから25分以上(チェリビダッケ)のものまであるが、ほとんどの演奏が18分から20分です。

 

第2楽章 Allegro con grazia

複合三部形式ニ長調
4分の5拍子という混合拍子によるワルツ。スラブの音楽によく見られる拍子で、優雅でありながらも不安定な暗さと慰めのようなメロディーが交差します。中間部はロ短調に転調し、一層暗さに支配され、終楽章のフィナーレと同様の主題が現れます。

演奏時間は8分から9分程度。

 

第3楽章 Allegro molto vivace

スケルツォと行進曲(A-B-A-B)、ト長調
8分の12拍子のスケルツォ的な楽想の中から4分の4拍子の行進曲が次第に力強く現れ、最後は力強く高揚して終わります。弟のモデストは、彼の音楽の発展史を描いていると語っています。

演奏時間は8分から10分。

 

第4楽章 Finale. Adagio lamentoso - Andante - Andante non tanto

ソナタ形式的な構成を持つ複合三部形式ロ短調
4分の3拍子。冒頭の主題は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが主旋律を1音ごとに交互に弾くという独創的なオーケストレーションが行われており、第2ヴァイオリンが右側に配置される両翼配置の場合、旋律が交互にステレオ効果で聴こえてくる音響上の試みです。なお、再現部では第1ヴァイオリンにのみ任され、提示部のためらいがちな性格を排除しているのも興味深いです。音楽は次第に高潮し、情熱的なクライマックスを形作り、その後ピアニッシモタムタムがなり、再現部の後は次第に諦観的となり、やがて曲は消えるように終わります。

演奏時間は9分から11分。晩年のレナード・バーンスタインニューヨーク・フィルハーモニックを指揮した盤のように、17分以上かけている非常に遅い演奏もある。

 

さて、かずメーターですが、

第一楽章 87点

第二楽章 88点

第三楽章 88点

第四楽章 86点

どうなんでしょう。なんか第三楽章までと第四楽章と別物に感じてしまうんですよね。

やっぱ個人的にはアダージョは第四楽章じゃないでしょうというのが私の見解です。

いや、決して悪い曲じゃないんですよ。これを初心者に聞いてみなと勧められるかというと私は…です。

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