交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

ハイドン 交響曲第87~89番

さて、今回はハイドン交響曲第87~89番についてお話します。

 

最初に第87番、

交響曲第87番 イ長調 Hob.I:87は、1786年頃に作曲した交響曲で、6曲からなるパリ交響曲の第6曲です。(作曲順では3番目と考えられています)

第1楽章 Vivace

エネルギッシュな第1、戯れるような第2主題ともに8分音符5つによるリズム(86番の終楽章でも用いられた)を用いて構成され、意表をつく強弱と転調で進んでいきます。

第2楽章 Adagio

静謐な叙情の中に木管のソロと6連譜の動きが彩りを添えます。

第3楽章 Menuetto & Trio

躍動するメヌエットとObが伸びやかに歌うトリオ。

第4楽章 Finale: Vivace

分散和音と長音符を組み合わせたテーマが奔放に扱われつつ、ところどころフェルマータによる半終止が面白い効果をあげています。

 

次は、第88番

交響曲第88番ト長調 Hob.I:88は、1787年に作曲した交響曲です。

「V字」の愛称で呼ばれることもありますが、ハイドンの生前にロンドンのフォースター社から交響曲選集を出版した際に各曲にアルファベット1字からなる整理用の番号(A-W)が印刷されていたのが愛称としてそのまま残ったもので、タイトルと交響曲自体の内容は全く関係していません。

ドナルド・フランシス・トーヴィーによれば、ブラームスはこの交響曲の第2楽章を聴いて、「私の第9交響曲はこのように聴かせたい」と言ったと伝えられています。

「パリ交響曲」や「ロンドン交響曲」の1曲でもなく、曰くありげな愛称が付いているわけでもないものの、ハイドンの最も有名な作品の一つとなっています。

エステルハージ家の楽団のヴァイオリン奏者だったヨハン・ペーター・トストが、楽団を去ってパリで活動することになった時、トストから依頼されて第89番とともに1787年に作曲されたものです。ハイドンはこの2曲を弦楽四重奏曲作品54および55(トスト四重奏曲、全6曲)とともにトストに譲渡しました。トストはこの曲をフランスの出版者であるジャン=ジョルジュ・ジーバー(Jean-Georges Sieber)に売ったが、そのときに他の交響曲やトストが権利を持っていないクラヴィーア・ソナタまで売り、しかもハイドンに約束した金を支払わなかったために、両者の間にしばらく問題が起きました。なお楽譜の販売によって相当に裕福になったトストは、その後ヴァイオリニストではなく音楽作品の出版仲介業者として過ごすようになり、ハイドン弦楽四重奏曲作品64(第2トスト四重奏曲、全6曲)やモーツァルトの弦楽五重奏曲第5番および第6番はトストからの依頼で作曲されたものだそうです。

楽団の編成上の制約がなかったためか、オーケストラの扱いに自由さをみせています。

自筆原稿は残っていませんが、同時期に作曲された89番の自筆原稿に1787年と記されていることから、同年の作曲とされています。

第1楽章 Adagio - Allegro
この楽章にはトランペットとティンパニは出現しません。

3⁄4拍子、アダージョによる16小節の序奏につづいて、アレグロ、2⁄4拍子の本体が開始されます。提示部の主題はまず弦楽器によっておだやかに現れ、ついで低音による16分音符の特徴的な伴奏をともなって全奏でくり返されます。この主題が全曲を支配する、単一主題の楽曲です。

第2楽章 Largo
ニ長調、3⁄4拍子、主題と6つの変奏で構成される変奏曲形式。主題はまずオーボエとチェロのオクターブの音程をもった二重奏によって現れます。この楽章の41小節めにはじめてフォルティッシモでトランペットとティンパニが弦楽器のトレモロとともに出現します。ハイドン交響曲の中でははじめてトランペットとティンパニを緩徐楽章に使用したもので、モーツァルト交響曲第36番「リンツ」(1783年)という先例はあったものの当時においては珍しく、センセーションを呼び起こしました。

第3楽章 Menuetto: Allegretto - Trio
メヌエット主部は装飾音を多用した華やかな音楽です。トリオではトランペットとティンパニは休み、ファゴットヴィオラによるドローンの伸ばしを含む土俗的な音楽になっています。

第4楽章 Finale: Allegro con spirito
2⁄4拍子、ロンドソナタ形式。主題はファゴットと第1ヴァイオリンによって開始されます。展開部で主題に戻ったところで弦楽器による2拍おくれのカノンがフォルティッシモでくり広げられ、この曲の対位法的な見せ場になっています。

 

最後に第89番

交響曲第89番ヘ長調 Hob.I:89は、1787年に完成させた交響曲です。

ロンドンのフォースターから出版されたハイドン交響曲選集第2集(23曲)では各曲にA-Wの番号がつけられていたが、第88番がV字、第89番にはW字がつけられていました。

この交響曲は自筆原稿が残っており、1787年の日付が記されています。交響曲第88番とともに、ヨハン・トストのために作曲されたが、第88番の知名度に比較すると、楽器編成も楽曲規模も小さな第89番は演奏されることが少ないそうです。

ランドンはこの交響曲を評して、「活力に富んだ第88番と相並んで位置している第89番は、第一印象としてはむしろ迫力を欠いたものとうつる。(中略)控え目かつ冷静であって、また非のうちどころのない形式構造をもっており、言ってみれば同時代のドイツの、完全な形をもつ陶器の小彫像に似ている。」と言っています。

第2楽章と第4楽章は、前年の1786年にナポリ王のために作曲したリラ協奏曲 ヘ長調(Hob.VIIh:5)の第2楽章と第3楽章を自由に転用したものになっていますが、リラの箇所をフルートとオーボエに置き換えており、このために管楽器の音色の美しい箇所が多くなっています。

第1楽章 Vivace
4⁄4拍子、ソナタ形式。第88番とは異なって序奏は置かれていません。フォルテによる二小節の分散和音に続いて第1主題が出現します。曲の途中で同じリズム(ベートーヴェン交響曲第5番の第1主題と同じもの)が18回くり返し現れ、先に進まないように聞こえる箇所があります(同じリズムは展開部や再現部でも強調される)。親しみやすい第2主題が現れるとまもなく提示部は終わります。展開部は提示部の各楽句がほぼ登場順に展開していきます。再現部はやはり分散和音ではじまりますが、そこからフルートとファゴットの9小節にわたる二重奏になり、しばらく提示部とは大きく異なる進行になります。最後に20小節ほどのコーダが設けられています。

なお冒頭2小節は童謡『証城寺の狸囃子』(作曲:中山晋平)の出だしと同じです。

第2楽章 Andante con Moto
ハ長調、6⁄8拍子、三部形式。ヴァイオリンとフルートでシチリアーナのリズムを持つ主題が出現した後、弦楽器のピッツィカートの上を管楽合奏が呼応します。柔らかい抒情性を醸し出していますが、時折激しさも見せます。なお3部形式ではあるものの変奏曲に近く、中間部では短調で第1部の変奏のように構成されています。ここでは最後に結尾が付きます。

第3楽章 Menuetto - Trio. Allegretto
メヌエット主部は管楽合奏のみで開始する田園風の音楽です。トリオは素朴なレントラー風です。

第4楽章 Finale. Vivace assai
2⁄4拍子、ロンド形式。民謡風の音楽で、形式は「A-B-A-C-A」と単純なものとなっています。第2楽章と同様にリラ協奏曲に由来するが、原曲にはないヘ短調の部分がつけ加えられています。Aの部分の終わり近く、フルートとヴァイオリンが長く音を伸ばしたあと、主題に戻る場所に「strascinando」という音を伸ばすしるしがついています。

 

さて、かずメーターですが、

第87番 82点

第88番 84点

第89番 83点

となりました。この辺になると完全に『ハイドン、復活』を印象付ける聞いていて、とても楽しくなる曲になります。

第87番は86番と比べ、第1楽章の入りがちょっと盛り上げりに欠けますが、次第に86番に負けない曲になっていきます。とても楽しい曲です。

第88番は有無も言わせぬハイドン節ですが、曲の構成も楽しく、細かく聴くといろいろと工夫が見て取れ良い作品だと思いました。

第89番は88番よりさらに華やかになりますが、後半ちょっと泥臭くなり、良い意味で牧歌的な印象も受けます。

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