交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

シューベルト 交響曲第8番

さて、今回はシューベルト交響曲第8番についてお話します。

 

交響曲第8番ハ長調 D 944 は、1825年から1826年にかけて作曲され、1838年に初演された4楽章からなる交響曲です。

本作品は、古くより番号が様々に呼ばれ、20世紀初頭までは「未完のものを除いて7番目」なので第7番と呼ばれることが多かったそうです。次いで、1951年にオットー・エーリヒ・ドイチュがシューベルトの作品目録を作成しドイッチュ番号を振って以降は、未完ながら演奏される2曲(D729のホ長調のもの、および、D759のロ短調の『未完成交響曲』)を含めて第9番と呼ばれるようになりました。その後ドイチュの死後の1978年にヴァルター・デュルWalther Dürr(独語版)、アルノルト・ファイルArnold Feil(独語版)らによってドイチュ番号の改定が行われ、自筆譜のままで演奏できるという意味で完成されていると認められる交響曲の8番目のものであることから第8番とし、テュービンゲンの「国際シューベルト協会」(Internationale Schubert-Gesellschaft e.V.)をはじめ多くの楽譜出版社がこれに従ったため、第8番とすることも多くなってきています。ただし、そういう場合でも混乱を招かないように、第8(9)番と紹介することも少なくないようです。世界的には現在も第9番としている例も多く、日本でもCDや楽譜のタイトルには第9番とついている場合が多いので、注意を要します。

本記事の交響曲は通称『ザ・グレート』(独:Die große C-dur 、英:The Great C major)と呼ばれる事がありますが、この呼び名はシューベルト交響曲のうちハ長調の作品に第6番と第8番の2曲があり、第6番の方が小規模であるため「小ハ長調(独:Die kleine C-Dur)」と呼ばれ、第8番が「大ハ長調」と呼ばれることに由来します。この『ザ・グレート』はイギリスの楽譜出版社が出版する際の英訳によって付けられたものですが、本来は上述のように第6番と区別するために付けたため「大きい方(のハ長調交響曲)」といった程度の意味合いしかなく、「偉大な」という趣旨は持ちません。しかしそのスケールや楽想、規模は(本来意図したものではないにせよ、偉大と言うニュアンスでも)『ザ・グレート』の名に相応しく、現在ではこの曲の通称として定着しています。

指示通りに演奏してもゆうに60分以上かかる大曲で、シューマンは曲をジャン・パウルの小説にたとえ、「すばらしい長さ (天国的な長さ)」と賞賛しています。ベートーヴェン交響曲の規模の大きさと力強さとを受け継ぎ、彼独自のロマン性を加えて完成された作品となっており、後のブルックナーマーラー、20世紀のショスタコーヴィチなどの交響曲につながっています。

完成直後の1826年、シューベルトは同曲の楽譜をウィーン楽友協会へ献辞を添えて提出しましたが、わずかな謝礼こそ得たものの、演奏困難との理由で演奏されることはなかったそうです。1828年にも同協会に提出したが、同様に演奏されることはなかったそうです。

この作品は、シューベルトの死後、1839年シューマンが、すっかり忘れ去られてしまっていたシューベルトの自筆譜を発見して世に知られるようになりました。前年にシューベルトの墓を訪れていたシューマンは、同年1月1日にウィーンのシューベルト宅を訪れるまでは、シューベルトはあくまで歌曲や小規模な室内楽ピアノ曲などを演奏する、気心知れた仲間内の演奏会「シューベルティアーデ」の作曲家という認識しか持っていなかったそうです。彼の部屋を管理していた兄フェルディナントはシューベルトの死後そのままに仕事机を保管していました。シューマンは、その机の上にあった長大な交響曲を発見し、シューベルトを歌曲の作曲家と見ていた自らの認識を覆すその作品に驚愕しました。シューマンはぜひこれを演奏したい、楽譜をライプツィヒの盟友メンデルスゾーンに送りたいとシューベルトの兄に懇願し、ようやく許可を取り付けてメンデルスゾーンのもとに楽譜が届けられたといいます。

1838年3月21日、メンデルスゾーンの指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏によって、この交響曲は初演されました。シューマンは初演には立ち会えず、翌年の再演でようやく聴くことが出来ました。

シューベルトは、幻の「グムンデン・ガスタイン交響曲」なる曲を作曲したとされています。これは作曲家の日記や手紙から1825年に彼がグムンデンおよびバート・ガスタインに滞在し、そこで作曲したとされるものですが、その曲がどれに当たるかは解明されていません。このD 944の交響曲は、かつては直筆譜の日付から1828年の作曲と考えられてきました。しかし用紙のすかし模様が25年ごろに用いられていたものと一致すること、28が25の読み間違いの可能性があることなどの理由から、現在では1825年から26年にかけての作曲であると考えられています。このため、このD 944が「グムンデン・ガスタイン交響曲」ではないかとする説が有力となっています。

後に、シュトゥットガルトでD 849にあたるとされるホ長調交響曲の筆写譜が「偶然に発見」され、ギュンター・ノイホルト(英語版、ドイツ語版)指揮のシュトゥットガルト放送交響楽団による演奏の録音が南ドイツ放送でFM放送され、また出版され、ゲルハルト・サミュエル指揮のシンシナティー・フィルハーモニー管弦楽団でCD化されました。この交響曲はD 944と主題がそっくりで、演奏時間は60分ぐらいと規模も同じで、D 944のための下書きとして書かれたものとも考えられ、これがグムンデン・ガスタイン交響曲ではないかとも考えられました。しかし後日、このD 849とされたホ長調交響曲は1973年にヘンレ社に楽譜のコピーを提供したグンター・エルショルツ (Gunter Elsholz) がシューベルトの残した断片を再構成した偽作であることが判明しました。

 

第1楽章 Andante - Allegro ma non troppo

序奏付きソナタ形式(提示部リピート付き)。

ホルン2本のユニゾンでおおらかに始まります。この開始部分はシューマン交響曲第1番『春』やメンデルスゾーン交響曲第2番、ブラームスピアノ協奏曲第2番のモデルとなっています。この序奏部分が楽章全体を構成する主要なモチーフを提示している点に大きな特徴があります。第1主題は音の大きく動く付点のリズムと3連符に特徴があります。第2主題が5度上の属調であるト長調ではなく、3度上のホ短調で書かれているのも大きな特徴(再現部では同主調ハ短調で1度、平行調イ短調でもう一度奏されており、ソナタ形式としての整合性が取られている)です。変イ短調に始まるトロンボーンの旋律が第3主題とされることもありますが、動機としては序奏の旋律の断片です。リズミカルなモチーフを主体として主題が構成されている点には、尊敬してやまなかったベートーヴェンの特に交響曲第7番と多くの共通点を持つ一方で、大胆な転調や和声進行にはシューベルトらしさが満ちあふれています。第662小節から最終685小節にかけて、序奏の主題が、音価を2倍に引き伸ばされた形で(結果として序奏と同じテンポに聞こえる)2度力強く再現され、楽章を終えます。なお、この手法をシューベルト交響曲第1番第1楽章ですでに用いています。

なお、初版においては拍子が4/4拍子に改竄されていました。現在では、本来の自筆譜通り(2/2)に戻されています。

第2楽章 Andante con moto

展開部を欠くソナタ形式の緩徐楽章。

7番の第2楽章と同じような構造(A-B-A-B-A(コーダ))です。主としてオーボエが主旋律を担当する第1主題部は、スタッカートが特徴のリズミカルな動機を主体とし、かつ3つの異なる旋律から構成され、ピアノとフォルテシモの頻繁な交代を特徴としています。第2主題はヘ長調で書かれ(7番第1楽章と同じ調性関係)、第1主題とは対照的に息の長いレガートを主体とした下降旋律を特徴とする、シューベルトの面目躍如たる美しい旋律であり、対旋律の美しさも特筆に価します。中でも第148小節から12小節に渡るホルンと弦との対話はシューマンが絶賛していました。再現部では、第1主題が劇的に発展し、第2主題は主調の同主長調であるイ長調で再現します。第330小節からのコーダでは第1主題が短縮された形で再現します。

第3楽章 Scherzo. Allegro vivace

三部形式、3/4拍子の大掛かりなスケルツォ

ベートーヴェンスケルツォよりはメヌエットの性格を残しています。後のブルックナー後期作品を思わせるような息せき切るような主部の旋律と、シューベルトらしい旋律に溢れた雄大な中間部トリオ(イ長調)の対照が効果的です。スケルツォ主部はそれだけでソナタ形式の構造をしており、提示部に加え、展開部+再現部にもリピートがつけられており、特に後者は省略されることも多いです。トリオの旋律はベートーヴェン交響曲第4番の第3楽章のトリオのそれに似ています。

第4楽章 Finale. Allegro vivace

自由なソナタ形式(提示部リピート付き)。

1,155小節にも及ぶ長大なフィナーレ。第1楽章同様付点のリズムと3連符、そしてこの楽章ならではのオスティナートと強弱のコントラスト、激しい転調に特徴があり非常に急速で息を付かせません。ところどころ同じ和音が数小節にわたって続くところを如何に聞かせるかが、演奏者の腕の見せ所です。シューベルトピアノソナタ第18番以降、同音連打を積極的に導入しており、このフィナーレでも存分にこれが展開されます。

開幕の付点音符を素材とするハ長調の第1主題は非常に躍動的で、確保された後にト長調で抒情的な第2主題が木管によって朗々と歌われます。これが発展し、劇的な展開を見せた後にコデッタを経て、変ホ長調でこの曲の真の展開部。クラリネットが奏する第1・2主題と全く異なる旋律はベートーヴェン交響曲第9番の「歓喜の主題」が改変されて引用されており、ベートーヴェンに対するオマージュと考えられます。歓喜の歌も含めた展開、やや変型された再現部の後にppまで落ち、972小節目から始まるコーダでは2つの主題と歓喜の歌が組み合わさって堂々たる終結を迎えます。

 

さて、かずメーターですが、

第一楽章 91点

第二楽章 89点

第三楽章 89点

第四楽章 94点

やっぱ、「グレイト」。シューベルト交響曲の中ではずば抜けています。細かく見ちゃうとベートーヴェンよりも優れた箇所があり、やはり優れた作曲家です。

でもこの時代、シューマンはチョコチョコ出てきますね。私にとってシューマンって交響曲が少ないのでなんだかなぁなんですが、当時の音楽会を牛耳っていたようです。シューマンに賞賛されてナンボなので。

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お勧めのCDです。