グラズノフ 交響曲第8番
さて、今回はグラズノフの第8番についてお話します。
交響曲第8番は、グラズノフが1906年に完成した最後の交響曲です。続いて1910年に着手された第9番は、第1楽章のピアノ・スケッチのみで未完に終わりました。
第8番の作曲は1903年頃から始められましたが、完成までの間にロシア第一革命が起こり、その影響で師リムスキー=コルサコフがペテルブルク音楽院院長を解任され、これに抗議してグラズノフらも辞任、政府当局や音楽院側の譲歩により彼らの復職が認められ、グラズノフが新たに院長に選出されるなど、身辺があわただしい状況でした。
グラズノフはそれまでの音楽的実績と人望の厚さを買われ1905年40歳の若さにしてペテルブルク音楽院の院長に就任し、以後、後進の才能ある音楽家の保護と育成に多大な功績を残すこととなります。この交響曲第8番は、その翌年1906年41歳の時の作曲です。この後9番目となるニ短調の交響曲を手掛けていますが、これは未完に終わっていますので、完成した交響曲としては、この第8交響曲が最後になります。
第9交響曲になかなか手を付けられなかった理由として、著名な作曲家の多くが第9番の交響曲を書くと亡くなっていることから、不吉な験を担いで、筆が進まなかったと言われています。あるいは、彼はデビューも早く、その後も猛烈な勢いで、天分のままに音楽を紡ぎだしてしまったので、一生分の才能の源泉を40歳前後で掘り尽くしてしまったとも言われています。しかし現実的には、音楽院院長としての重責と多忙が重なり、作曲に充分な時間を割けなくなってしまったことが大きいと思われます。彼の教え子で作曲家のショスタコーヴィチがその回想録の中でグラズノフの院長としての業務が殺人的多忙さを極めるものだったと語られている点が注目されます。なにはともあれ余年30年も残しながら、交響曲の筆を折ってしまったことは惜しいことです。全曲で約35分。
第1楽章 Allegro moderato
ソナタ形式による。
冒頭の、憧憬を表すかのようなファゴットとホルンの主題が印象的で、これがさまざまに変化することで作品を形造ります。また冒頭のティンパニはこの交響曲の結末を予告しています。
第2楽章 Mesto
沈痛な佇まいを見せます。中間部でやや明るさを取り戻そうとしますが、金管楽器が、重い宿命を示すように事あるごとに圧し掛かり、決してそれを許しません。寂しい感情が心に深く刺さります。
第3楽章 Allegro
スケルツォですが、いつものバレエの小曲を思わせるような軽さは後退し、どこか不安定であり、激しさと苦渋を秘めています。終結部は荒々しく破れかぶれに閉じます。
第4楽章 Finale - Moderato sostenuto
ソナタ風の自由な形式。
聖歌を思わせるコラールの主題が、対位法的に処理され、格調を保ちます。堅牢そのものといった音楽にもかかわらず、枯れた寂しさを時折姿を見せて、強さと弱さが対比されます。この対比が作品の印象を深いものにしています。
さて、かずメーターですが
第一楽章 84点
第二楽章 82点
第三楽章 83点
第四楽章 83点
実は、今回、交響曲とは別にグラズノフの小作品集を聞いたのですが、とても説得力のあるわかりやすい曲でした。なんで交響曲になるといまひとつパンチが足らないんだろうと考えてしまいます。限りなく90点には近いのですが本当にワンパンチが足らないんです。でもいい曲です。
さて、グラズノフ、9番が未完成であるのですが第一楽章のみですので割愛させていただきます。次は何にしようかな?
お勧めのCDです。