交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

モーツァルト 交響曲第35番、第36番、第37番

今回はモーツァルト交響曲第35番、第36番、第37番についてお話します。

 

まずは、交響曲第35番。

この曲は、1782年にハフナー家のために作曲されたセレナードであり、同時期に交響曲へと編曲された楽曲です。旧全集では『交響曲第35番』の通し番号が与えられていて、交響曲第35番 ニ長調 K. 385「ハフナー」として知られています。

本作は通称「ハフナー」(Haffner)と言います。ザルツブルクの元市長の息子であり、モーツァルト自身にとっても幼なじみであったジークムント・ハフナーⅡ世(1756年 - 1787年)の姓に由来します。モーツァルトがハフナー家のために作曲した楽曲は2つあり、ともにセレナードです。1曲目は1776年作曲されたセレナード第7番K.250(K6.248b)で、こんにち『ハフナー・セレナード』と呼ばれ親しまれています。2曲目のセレナードはその6年後の1782年7月末に作曲された。ハフナー家が貴族になったことへの祝賀用のセレナードでしたが、オリジナル・フォームのセレナードはメヌエット1曲が散逸しています。行進曲(K6. 385a)は2曲目のセレナードのための行進曲であるとされています。

モーツァルトは1783年3月23日の予約演奏会のために旧作のであるハフナー家への第2セレナードを交響曲に編曲しました。編曲に際して行進曲と2つあったメヌエットのうちのひとつ(散逸した方)を削除し、楽器編成に第1と第4楽章にフルートとクラリネットを加えています。モーツァルトは自作のセレナードを交響曲に編曲することは多く、第1、第4、第5、第7『ハフナー・セレナード』、第9番『ポスト・ホルン』の各セレナードを交響曲に編曲しています。本作もこうした一連の編曲交響曲のひとつです。

この曲以降の6つの交響曲(第1楽章の序奏部以外はミヒャエル・ハイドン作である第37番ト長調 K. 444(425a)を除く)は「モーツァルトの6大交響曲」と呼ばれ、モーツァルト交響曲のなかでも特に人気が高いものです。

 

第1楽章 アレグロ・コン・スピリート

副主題を欠く変則的なソナタ形式

いきなり2オクターブも音が跳躍する冒頭のテーマは非常に印象的。その後、行進曲風のリズムが続きます。ソナタ形式では、通常で主題が2つありますが、この楽章では第2主題がはっきりと出てきません。これはフランツ・ヨーゼフ・ハイドン交響曲にもよく見られる形式で、展開部は転調を重ね陰影に富んだ形に作られています。当時のソナタ形式では珍しく提示部、展開部・再現部とも繰り返しの指示はありません。

第2楽章 アンダンテ

ソナタ形式
非常に優美なアンダンテ。弦楽器を中心としたBGM風の楽章で、もともとの用途であったセレナードの雰囲気を感じさせる楽章です。この楽章は交響曲への編曲に際してフルートとクラリネットは加えられませんでした。トランペットとティンパニは休止します。

第3楽章 メヌエット

三部形式
シンフォニックな主部に続き、トリオではオーボエファゴットが優雅な旋律を奏でます。この楽章も第2楽章同様にフルートとクラリネットは加えられていません。

第4楽章 プレスト

ロンドソナタ形式
プレストで演奏されるフィナーレ。形式的にはソナタ形式として解釈できますが、展開部が主調の第一主題で開始されていて、ロンド形式の性格も併せ持っています。弦楽器の弱音のユニゾンで始まり、打楽器、管楽器が加わり主題が力強く演奏されます。この主題は、そのころ初演された歌劇『後宮からの誘拐』K. 384から採られています。

 

続いて、交響曲第36番。

モーツァルトは1783年の10月から11月に掛けてのリンツ滞在中に、伯爵であったトゥーン・ホーエンシュタインの予約演奏会のため、この曲を4日間という速さで作曲したそうです。そのような経歴からこの交響曲は『リンツ』という愛称で呼ばれています。この優れた作品が4日という短期間で書かれたことは驚異的で、モーツァルトが天才であることを証明する具体例のひとつとされています。

また曲の完成度も第38番「プラハ」や、第39番・第40番・第41番「ジュピター」(いわゆる三大交響曲)に次ぐウィーン古典派交響曲の傑作で、演奏の機会・録音とも多いものです。演奏時間は約25分。

 

第1楽章 アダージョ - アレグロ・スピリトーソ

序奏付ソナタ形式

モーツァルトが、自身の交響曲で初めて緩やかな序奏を置きました。「生き生きと」と指示された主部はシンプルですが、湧き上がる美しさがあります。第1主題の旋律は全音符で伸ばされた音が印象的であり、旋律中のb音が彩を添えています。第2主題は激しい短調長調が交替します。全体的にオクターブの跳躍が目立ちます。

第2楽章 アンダンテ

ソナタ形式
当時の緩徐楽章にしては珍しく、トランペットとティンパニが用いられています。展開部で低弦とファゴットによって提示され、スタッカートのパッセージが印象的です。

第3楽章 メヌエット

飛び跳ねるようなリズムが印象的な主部と、オーボエファゴットの美しい二重奏のトリオからなります。

第4楽章 プレスト

ソナタ形式
両主題は4度跳躍を持ち、軽やかな第1主題とレガートな第2主題のあと、対旋律を伴ってドーシドの音型が模倣され、展開されていきます。その後も7度跳躍の印象的なパッセージが現れ、コデッタも充実しています。展開部はアルペッジョの旋律が展開されます。

 

最後に交響曲第37番。

この曲は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの弟ミヒャエル・ハイドン交響曲第25番 ト長調 MH 334 P. 16に、モーツァルトアダージョ・マエストーゾの序奏を書き加えたものです。

1783年10月に故郷のザルツブルク経由でリンツへ到着したモーツァルトは、同月31日にトゥーン・ホーエンシュタイン伯爵邸へ滞在して歓待を受け、伯爵から演奏会の開催とそこで披露するための新しい交響曲の作曲を依頼されました。モーツァルトはこれを快諾しますが、その演奏会の日取りは11月4日、わずか3日後でした。この日に書かれた父レオポルト宛の書簡でモーツァルトは「手持ちの交響曲が一つもないので、いまから急いで作曲しなければならない」ことを伝えています。

結局演奏会は成功裏に終わっているのでモーツァルトは実際に3日で交響曲を完成させていますが、リンツ滞在期に書かれたと考えられる交響曲は2つ(第36番 K. 425「リンツ」および第37番)存在するため、この2曲のうちのいずれかがわずか3日で書き上げられて初演されたものということになります。翌1784年5月15日のレオポルト宛書簡で第36番のことを「トゥーン伯爵のために書いたもの」と説明しているところから、こちらが演奏会用に作曲したものであると見なされ、「リンツ」の通称がつけられることになりました。

しかし1907年、M. ハイドンの研究家ペルガー(M. ハイドンの作品番号を表す「P(erger).」は彼の名に基づく)によって、もう一方の第37番に関して新たな事実が明らかになりました。それまでモーツァルト交響曲第37番として知られていた作品は、M. ハイドンが1783年5月に作曲した交響曲第25番P.16にモーツァルトが作曲した序奏をつけ加えたにすぎないものだということが判明したのです。これを受けて1964年に刊行されたケッヘルカタログ第6版では、この序奏のみをモーツァルトの作品として記載し、ケッヘル番号も従来のK. 444からK. 425a / Anh. A53(Anh.は断片などを表す)へと変更されました。また、第38番以降の交響曲はいずれもモーツァルトの代表作であり、曲そのものと番号とが強く結び付けられて記憶されているため、番号の繰上げ変更がなされることはなく、交響曲第37番は欠番となりました。

この事実が報告されて以来、トゥーン伯爵のために3日で作曲したのは第37番(とされてきた交響曲。以下K. 425a)だったのではないかという説が有力になりました。「リンツ」ほど完成度の高い交響曲をわずか3日で仕上げるのは常人には不可能、いかに天才モーツァルトといえども困難だったはずで、少なくとも他人の作品に序奏を追加しただけで間に合わせたとみた方が、レオポルト宛書簡との食い違いが生じるにはせよ現実的だからです。また、モーツァルトはM. ハイドンとかねてから親しい友人であり、同じ1783年にM. ハイドンが体調を崩してコロレド大司教から依頼されていた作曲の仕事を落しそうになっていたときには代作を自ら買って出て、急遽ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲(K. 423とK. 424)を作曲して危機を救ったこともあるため、今度はモーツァルトを助けるためにM. ハイドンの方から自分の曲を貸したという可能性も考えられました。

ところが、K. 425aについての研究が進められた結果、アラン・タイソンによってさらなる新事実が発表された。序奏を加筆するに当たってモーツァルトの使用した五線紙は、モーツァルトリンツを離れてウィーンへ戻った1783年12月以降、正確には1784年の2月から4月というごく限定された時期にしか用いられていないものだったのです。したがってトゥーン伯爵のためにリンツで作曲した交響曲がK. 425aであるという新説は否定され、従来の学説どおり第36番「リンツ」がその曲であることも明らかになりました。

しかし、速筆をもって知られるモーツァルトならば第36番を3日で作曲することまではできたとしても、その上にオーケストラのメンバー用の譜面の作成とリハーサルもこなさなければならなかったことも考え合わせれば物理的な不可能性は否定しようがなく、いかにして初演に間に合わせることができたのかは不明のままです。

 

第1楽章 アダージョ・マエストーソ (序奏) - アレグロ・コン・スピリート

 

第2楽章 アンダンテ・ソステヌート

 

第3楽章 アレグロモルト

 

さて、かずメーターですが、

第35番

第一楽章 88点

第二楽章 80点

第三楽章 82点

第四楽章 86点

第36番

第一楽章 84点

第二楽章 81点

第三楽章 82点

第四楽章 85点

第37番

第一楽章 84点

第二楽章 80点

第三楽章 81点

なんたって、35番ですね。いいですよ。モーツァルトの躍動感が出まくっててとても楽しい曲です。

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第37番はありませんでした。