交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

マーラー 交響曲第5番

さて、今日はマーラー交響曲第5番についてお話します。

マーラーの5番は1番、4番とともにマーラー交響曲としてはコンパクトな構成であるため、演奏される機会は多い曲です。

第一楽章がいきなり葬送曲なのでびっくらしますが、第五楽章ではしっかり明るく終わらせてくれるので、自分はこの曲が好きでBGMなんかにして通勤時聞いています。それと演奏が1枚のCDに入りきる程度なので通勤の片道でちょうど終わるのでそんな点も好きなところです。

 

交響曲第5番は、マーラーが1902年に完成した5番目の交響曲です。5楽章からなります。マーラーの作曲活動の中期を代表する作品に位置づけられるとともに、作曲された時期は、ウィーン時代の「絶頂期」とも見られる期間に当たっています。

 

1970年代後半から起こったマーラー・ブーム以降、マーラー交響曲のなかで人気が高い作品となっています。その理由としては、大編成の管弦楽が充実した書法で効果的に扱われ、非常に聴き映えがすること、音楽の進行が「暗→明」というベートーヴェン以来の伝統的図式によっており、曲想もメロディアスで、マーラーの音楽としては比較的明快で親しみやすいことが挙げられます。とりわけ、ハープと弦楽器による第4楽章アダージェットは、ヴィスコンティ監督の映画『ベニスに死す』で使われ、ブームの火付け役を果たしただけでなく、マーラーの音楽の代名詞的存在ともなっています。

第2番から第4番までの3作が「角笛交響曲」と呼ばれ、声楽入りであるのに対し、第5番、第6番、第7番の3作は声楽を含まない純器楽のための交響曲群となっています。第5番で声楽を廃し、純器楽による音楽展開を追求するなかで、一連の音型を異なる楽器で受け継いで音色を変化させたり、対位法を駆使した多声的な書法が顕著に表れています。このような書法は、音楽の重層的な展開を助長し、多義性を強める要素ともなっており、以降につづく交響曲を含めたマーラーの音楽の特徴となっていきます。

また、第5番には同時期に作曲された「少年鼓手」(『少年の魔法の角笛』に基づく)や、リュッケルトの詩に基づく『亡き子をしのぶ歌』、『リュッケルトの詩による5つの歌曲』と相互に共通した動機や曲調が認められ、声楽を含まないとはいえ、マーラーの歌曲との関連は失われていません。さらに第4番以降しばしば指摘される「古典回帰」の傾向についても、それほど単純ではなく、書法同様の多義性をはらんでいます。

演奏時間約70分。

 

第1楽章 葬送行進曲 In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt.(正確な速さで。厳粛に。葬列のように) 二つの中間部を持つABACAの形式(小ロンド形式

交響曲第4番第1楽章で姿を見せたトランペットの不吉なファンファーレが、重々しい葬送行進曲の開始を告げます。主要主題は弦楽器で「いくらかテンポを抑えて」演奏され、付点リズムが特徴的です。この主題は繰り返されるたびに変奏され、オーケストレーションも変化します。葬送行進曲の曲想は『少年の魔法の角笛』の「少年鼓手」との関連が指摘されます。一つの旋律が異なる楽器に受け継がれて音色変化するという、マーラーが得意とする手法が見られます。再びファンファーレの導入句が出てきて、主要主題が変奏されます。

さらにファンファーレが顔を出すと、「突然、より速く、情熱的に荒々しく」第1トリオが始まります。第1トリオは激しいもので、やがてトランペットがファンファーレを出して、主部が回帰します。主要主題は今度は木管に出てきます。終わりには、『亡き子をしのぶ歌』の第1曲「いま太陽は晴れやかに昇る」からの引用があり、ティンパニのきざむリズムが残ります。第2トリオは弦によって始まる陰鬱なものです。重苦しい頂点を築くと、トランペットのファンファーレが三度現れるますが、そのまま静まってゆき、最後にトランペットと大太鼓が残って、曲は、静かに結ばれます。

演奏時間は11~15分程度。本楽章はマーラー自身による演奏がピアノロールに残されており、その演奏時間は約14分です。

 

第2楽章 Stürmisch bewegt. Mit grösster Vehemenz. (嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって) ソナタ形式

第1楽章の素材が随所に使われていて、関連づけられています。 短い序奏につづいて、ヴァイオリンが激しい動きで第1主題を出します。曲はうねるように進み、テンポを落とすとチェロがヘ短調で第2主題を大きく歌います。この旋律は第1楽章、第二の中間部の動機に基づいています。 展開部では初めに序奏の動機を扱い、第1主題が出ますがすぐに静まり、ティンパニの弱いトリル保持の上に、チェロが途切れがちの音型を演奏するうちに第2主題につながっていきます。明るい行進曲調になりますが、第1主題が戻ってきて再現部となります。すぐに第2主題がつづきます。第2主題に基づいて悲壮さを増し、引きずるような頂点となります。楽章の終わり近く、金管の輝かしいコラール(譜例5)が二長調で現れますが、束の間の幻のように消え去って、煙たなびく戦場のような雰囲気で終わります。

演奏時間:13.5~16分程度。

 

第3楽章 スケルツォ Kräftig, nicht zu schnell.(力強く、速すぎずに)、自由なソナタ形式

拡大されたソナタ形式スケルツォで全曲の中でも最長の楽章です。この楽章単独で第2部となっています。第1、2楽章から一転して楽しげな楽想で、4本のホルンの特徴的な信号音の導入に促されて木管が第1主題(スケルツォ主題)を出します。第1主題が変奏されながらひとしきり発展した後、レントラー風の旋律を持つ第2主題(第1トリオ)が「いくぶん落ち着いて」ヴァイオリンで提示されます。これは長く続かず、すぐに第1主題が回帰します。

まもなく、展開的な楽想になり「より遅く、落ち着いて」と記された長い第3主題部(第2トリオ)へ入っていきます。主題を変奏しながら進行し、最後はピッツィカートで扱われます。

そこから第2主題が顔を出して展開部へ入ります。展開部は短いが、ホルツクラッパーが骨の鳴るような音を出すなど効果的に主題を扱います。提示部と同様に再現部も開始します。第1主題の再現後、第2主題、第3主題も混ざり合わさって劇的に展開し、展開部が短いのを補っています。その後、第2主題が穏やかに残り、提示部と同様に第3主題による静止部分がきて、やはり最後はピッツィカートで扱います。コーダは華やかなもので最後にホルンの信号音が出て曲を閉めます。

全曲の構成は、この長大なスケルツォ楽章を中心として各楽章が対称的に配置されており、マーラーは、この手法を第7番でも使用することになります。

 

第4楽章 Adagietto. Sehr langsam. 非常に遅く、三部形式

ハープと弦楽器のみで演奏される、静謐感に満ちた美しい楽章であることから、別名「愛の楽章」とも呼ばれます。『亡き子をしのぶ歌』第2曲「なぜそんな暗い眼差しで」及び『リュッケルトの詩による5つの歌曲』第3曲「私はこの世に忘れられ」との関連が指摘されます。 中間部ではやや表情が明るくなり、ハープは沈黙、弦楽器のみで憧憬を湛えた旋律が出ます。この旋律は、終曲でも使用されます。休みなく第5楽章へ繋がります。

ルキノ・ヴィスコンティ監督による映画『ベニスに死す』で使用されたことで有名となり、しばしば単独で演奏される。 なお、楽章の表題は「アダージェット」ですが、演奏指示はSehr langsam (非常に遅く)となっています(意味的にAdagiettoとSehr langsamの指示は対立するものではない)。一般に10分前後の演奏時間であるが、マーラーとメンゲルベルグは約7分で演奏しました。

 

第5楽章 Rondo-Finale. Allegro giocoso  ロンド - フィナーレ。アレグロ・楽しげに。自由なソナタ形式

第4楽章の余韻が残る中、ホルン、ファゴットクラリネットが牧歌的に掛け合います。このファゴットの音型は、『少年の魔法の角笛』内の一曲「高邁なる知性への賛美」からの引用です。 短い序奏が終わると、ホルンによるなだらかな下降音型が特徴の第1主題、低弦によるせわしない第2主題が呈示され、これらに対位旋律が組み合わされて次第に華々しくフーガ的に展開します。再び第1主題が戻り、提示部が変奏的に反復されます。第2主題も現れ、すぐ後に第4楽章の中間主題がコデッタとして現れますが、軽快に舞うような曲調となっています。

この部分が終わると展開部に入り、引き続きフーガ的楽想が展開されます。コデッタ主題が現れ、次第に力を増してのクライマックスの後、再現部に入りますが、第1主題はかなり変形されていて明確ではありません。第2主題、コデッタ主題も再現され、ふたたび展開部最後に現れたクライマックスとなりそのまま壮大なコーダに入ります。第2楽章で幻のように現れて消えた金管のコラールが、今度は確信的に再現され、最後は速度を上げて華々しく終わります。  

 

ここでマーラーの奥さんであるアルマと交響曲第5番に関する記録がありますのでちょっと書きますね…

マーラーがアルマと出会ったのは、交響曲第5番の作曲中であったそうです。メンゲルベルクによると、第5番の第4楽章アダージェットはアルマへの愛の調べとして書かれたそうです。アルマがメンゲルベルクに宛てた書簡によると、マーラーは次の詩を残しそうです。

「Wie ich dich liebe, Du meine Sonne, ich kann mit Worten Dir's nicht sagen. Nur meine Sehnsucht kann ich Dir klagen und meine Liebe. (私がどれほどあなたを愛しているか、我が太陽よ、それは言葉では表せない。ただ我が願いと、そして愛を告げることができるだけだ。)」

アルマの回想によれば、アルマは第5交響曲を初めて聞いた際、よい点を褒めつつも、フィナーレのコラールについて「聖歌風で退屈」と評したそうです。マーラーが「ブルックナーも同じことをやっている。」と反論すると、アルマは「あなたとブルックナーは違うわ。」と答えたそうです(例えとして出てくる人がすごい(笑))。マーラーはこのときカトリックに改宗し、その神秘性に過剰に惹かれていたとアルマは述べていたそうです。また、アルマはこの曲のパート譜の写譜を一部手伝っていたそうです。

 

さて、マーラーの第5番を「かずメーター」で評価しました。

第一楽章 91点

第二楽章 87点

第三楽章 87点

第四楽章 91点

第五楽章 94点

でした。通しで是非とも聞いてみてください。また、アルマの感想を頭に入れて聴くのも楽しいですよね。

次はいよいよ私がクラシックで最も好きな曲のうちの一つ、マーラー交響曲第6番「悲劇的」のお話をしたいと思います。

 

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 お勧めのCDです。