交響曲、大好き!

交響曲といっても知られていないものも多いと思います。 皆さんが聞きなれた/聞いたことがない交響曲を紹介していければと思います。

マーラー 交響曲第3番

今回はマーラー交響曲第3番についてお話します。

マーラー好きの私ですがたぶん第3番は一番聴く機会が多い曲です。楽団の編成は声楽も入り大規模なんですが、おもちゃ箱を開けたような華やかさがあってとても楽しいです。

 

交響曲第3番は、マーラーが1895年から1896年にかけて作曲しました。全6楽章からなり、第4楽章にアルトの独唱、第5楽章にアルト独唱と児童合唱、女声合唱を導入しています。演奏時間は第2番よりさらに長い約100分です。マーラー交響曲としても、また通常の演奏会で採り上げられる交響曲としても、最長の曲として、かつては「世界最長の交響曲」としてギネスブックに掲載されていました。

作曲時にマーラーは全曲及び各楽章ごとにも標題を付していましたが、出版時にこれらをすべて削除しています。交響曲全体の標題は、初期には「幸福な生活-夏の夜の夢」、その後「楽しい学問-夏の朝の夢」、「夏の真昼の夢」などと変遷しています。各楽章に付けられていた標題も含めて、これらは作曲と平行して考えられていたもので、音楽の内容と深く結びついています。したがって、演奏や録音の際の解説では作品理解の助けとして各楽章の標題が紹介されることが多く、交響曲の副題として「夏の交響曲」あるいは「夏の朝の夢」などとするものも一部にあります。

もともと7楽章構成で構想されていましたが、最後の楽章は分離されて交響曲第4番の第4楽章となりました。このため、第3交響曲の第5楽章と第4交響曲の第4楽章には同じ旋律素材が見られるなど、ふたつの作品には音楽的に関連があります。暇があった聞いてみてくださいね。また、交響曲第2番も含めて、声楽の歌詞に歌曲『少年の魔法の角笛』を用いていることから、これらを「角笛三部作」と括ることがあります。

先にお話ししました各楽章の副題ですが、

第一部

  • 序奏 「牧神が目覚める」
  • 第1楽章 「夏が行進してくる(バッカスの行進)」 

第二部

  • 第2楽章 「野原の花々が私に語ること」
  • 第3楽章 「森の動物たちが私に語ること」
  • 第4楽章 「夜が私に語ること」
  • 第5楽章 「天使たちが私に語ること」
  • 第6楽章 「愛が私に語ること」

だったそうです。

第1楽章 力強く、決然と (Kräftig. Entschieden.) 拡大されたソナタ形式

8本のホルンの斉奏で出るのが第1主題です。この主題はブラームス交響曲第1番のフィナーレ主題の進行や、同じくブラームスの『大学祝典序曲』に用いられた学生歌「僕らは立派な学び舎を建てた」と似ています。金管や打楽器に重々しい行進曲のリズムが現れ、低弦の急速に突き上げるような動機やトランペットが半音階的に上昇する動機が加わります。弦のトレモロのなかでホルンが叫びのような第2主題を演奏します。興奮が静まると、木管のコラール風な動機に導かれて、オーボエがなめらかな第3主題が現れます。この部分が「目ざめる牧神」に当たると考えられます。ヴァイオリン独奏がつづき、長い休止となります。ここまでが、マーラーが標題に記していた「序奏」に当たります。

再び行進曲のリズムが現れ、トロンボーン独奏が第2主題に基づく自由な変形を叙唱風に演奏していきます。やがて第3主題に基づいて軽快な行進曲となり、クラリネットが第4主題を示します。第1主題が長調で明るくホルンに現れ、第3主題がつづきます。第4主題を経て力を増していき、第1主題に基づいて大きな頂点を作ります。この小結尾はフィナーレにも再現されます。ハープのグリッサンドも加え、強烈になったところで展開部にはいります。

展開部は、ホルンの第2主題で始まります。低弦の突き上げる動機やトランペット動機で荒涼とした雰囲気になりますが、静まると再び叙唱風なトロンボーン独奏が現れ、イングリッシュ・ホルンが受けます。弦のトレモロ、ヴァイオリン独奏につづいてトランペットとホルンが遠くで掛け合うなかで、第1主題、木管のコラール風動機が示されます。曲想が和らぎ、ホルン独奏とヴァイオリン独奏が絡み、オーボエ、チェロ独奏と受け継がれて多彩な効果を示します。クラリネットが下降していくと、低弦の小刻みなリズムを繰り返し、次第に高まっていきます。呈示部のさまざまな素材が組み合わされ、トロンボーンの第1主題が大きく示されると興奮は頂点に達し、さまざまな各楽器が乱舞のようにカデンツァ風に掛け合いながら楽器を減じ、最後に小太鼓だけが残ります。そこにホルンの第1主題が登場し、曲は再現部にはいります。

再現部は、「序奏」部が縮小され、すぐにトロンボーン独奏による叙唱となります。第2主題は明確に再現されません。低弦のリズムから行進曲となり、第3主題、第4主題が再現、ホルンで第1主題が出ると、曲は大きく高調していきます。やはり小結尾のクライマックスが築かれ、ハープのグリッサンドが出ると、そのまま短いコーダとなり、速度を速めて悦ばしくなり、最後はヘ長調で結ばれます。

演奏時間は約30.5~44分程度。この時点でベートーヴェンの第9級ですね(笑)

 

第2楽章 テンポ・ディ・メヌエット きわめて穏やかに (Tempo di Menuetto. Sehr mäßig. Ja nicht eilen!)ABABAのロンド形式

主部は弦のピチカートの上に、オーボエが穏やかな主要主題を出します。中間部は嬰ヘ短調で、3/8拍子から2/4拍子、9/8拍子とリズムが変化します。二回目の中間部はさらにめまぐるしい変化を見せます。主要主題は再現するたびにオーケストレーションが変えられていきます。結尾になると、中間部も引用し、最後に弦の高いフラジオレットの和音で終わります。

演奏時間は9~12分程度。

 

第3楽章 コモド・スケルツァンド 急がずに (Comodo. Scherzando. Ohne Hast.)  複合三部形式

主部は、それ自体が三部形式をとります。弦のピチカートに乗って、ピッコロが戯画的でいくぶんもの悲しげな主題を出します。これは『少年の魔法の角笛』から「夏の歌い手交代」(1887年-1890年作曲)の引用です。木管が小鳥のさえずりのような音型を示します。テンポを速めると、ヴァイオリンが新しい動機を出して活気づき、展開風に扱ったのち、主要主題が戻ります。やがてトランペットが信号風の動機を示すと、中間部となります。

中間部は、ポストホルンによって長い旋律が歌われます。途中、二度ほど主部の曲調が戻りますが、神秘的な森の雰囲気が支配的です。ポストホルンの演奏は難しいため、トランペットが弱音器を付けて吹く場合もあります。

主部が再現されますが、ポストホルンがもう一度回想されると、鳥の声のような動機を各楽器が繰り返して急激に高潮し、変ホ短調の和音で爆発します。金管の厳かな響きからまた力を増していって、その頂点で曲を閉じます。

演奏時間は15~19.5分程度です。

 

第4楽章 きわめてゆるやかに、神秘的に 一貫してppp(ピアニッシシモ)で (Sehr langsam. Misterioso. Durchaus ppp.

アルト独唱がニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』第4部、第19章「酔歌」の第12節「ツァラトゥストラの輪唱」から採られた歌詞を歌います。オーケストラの間奏を挟んで二部構成となっています。

序奏などに現れる動機は第1楽章との関連が深い。弦が静かに消えるようになったところで、次の楽章に切れめなくつづきます。

演奏時間は8.5~11分程度。

 

第5楽章 快活なテンポで、大胆な表出で (Lustig im Tempo und keck im Ausdruck.三部形式

児童合唱が鐘の音を模した「ビム・バム」を繰り返し、アルトと女声合唱が『少年の魔法の角笛』の「3人の天使は歌う」に基づく歌詞を歌います。「ビム・バム」の音型は、第1楽章のコラール風動機が原型です。 中間部分では短調となり、アルトに導かれて、交響曲第4番の終楽章で節を締めくくる重要な楽句が現れます。この楽章ではヴァイオリンは休み、管楽器の響きが主体となります。児童合唱と女声合唱がともに歌う「ビム・バム」で楽章が終わり、次の楽章に休みなくつづきます。

演奏時間は3.5~4.5分程度。

 

第6楽章 ゆるやかに、安らぎに満ちて、感情を込めて (Langsam. Ruhevoll. Empfunden.) 変奏曲の要素を持つ自由なロンド形式

Aを主要主題部、Bを副主題、Cを第1楽章小結尾の再現とすると、全体の構造はA-B-C-A-B-C-A-C-A-Coda。

弦楽合奏による美しい主要主題が演奏されます。次に副主題部となり木管が加わってきます。主要主題が復帰する前に短く第1楽章の小結尾が回想されます。この主題も再現されるたびに明確になっていきます。やがてヴァイオリンに主要主題が戻ると、木管の新しい対位旋律が伴っています。副主題部の再現はより長く、変奏的になっており、ホルンやヴァイオリン独奏、オーボエなど木管楽器によって情熱的に高まっていき、やはり第1楽章の小結尾の主題が回想されます。主要主題を暗示しながらすすみ、さらに第1楽章の小結尾部分が再現し、不協和音による頂点に達します。静寂の中でピッコロに導かれて金管に主要主題の再現となります。ここから曲は次第に力を増していき、エピソード部分の素材も輝かしく変形され、全管弦楽による主要主題の巨大な歩みとなります。その後、壮大なコーダになり、感動的に全曲をしめくくります。

演奏時間は20.5~34.3分程度。

 

さて、マーラーの第3番を「かずメーター」で評価しました。

第一楽章 94点

第二楽章 92点

第三楽章 90点

第四楽章 90点

第五楽章 91点

第六楽章 96点

すばらしい曲です。長い曲ですが終わった後で快感が残ります。おすすめの1曲です。

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 お勧めのCDです。